報復を最愛の君と
***


宿の部屋に行った私達は荷物を下ろした後、スイとルナに今日のパン屋でのことを話した。


「たしかにその話を聞くと、ベルス国には行かない方がよさそうですね…」


「でも、3人はベルス国に行きたいんですよね?」


ルナの質問にみんなうなずく。


ここで意見が割れたら、頑張って説得しなきゃいけない。


それは嫌だな、と考えていると。


「なら行くしかありませんね」


「え…?」


願望が強すぎて幻聴でも聞こえたのかと思った。


スイは今、行くと言ったんだよね?


「私も賛成です!ただ、十分に情報を集めてから行った方がいいと思います!」


「ルナ、スイ……ありがとう。そうだな。明日からは情報をまず集めてみよう」


ソラの言葉に、みんながホッとした顔でうなずく。


よかった、言い合いとかにならなくて。


できればギスギスした雰囲気にはなりたくないから。


それから、私達は2部屋にわかれた。


女子と男子はわかれた方がいいだろうって。


それはそうだよね。


でも、ソラと一緒にいたかったから残念、なんて本人には言えないけど。


お風呂に浸かって、みんな部屋着に着替える。


それから畳にふとんを敷いて横になる。


順番は右からルナ、私、クラだ。


明かりを消して少し経つと、すでにルナは寝てしまっていた。


すると突然、クラが話しかけてきた。


「ヒメア様、お話いいですか?」


「いいけど…ここで大丈夫?」


「はい」


そういうので、私は横になったままクラを見つめた。


「ヒメア様達はいったい何のためにここまで来たのですか?それに、人間主義とは…?」


恐る恐ると言った感じで聞いてきた。


私はひとつ深呼吸をして、できるだけ優しく答えた。


彼女に隠しごとはしたくない。


「私はイコロ国出身の第一王女なの。もう現代では能力者の存在は当たり前になってるんだけど、そうじゃない国がふたつあるの。それはイコロ国と、ソラの出身国のカント国。ちなみに、ソラはカント国の第一王子なんだ」


クラは少し驚いた表情をしていた。


そだよね、クラと私じゃ生きている時代がまるで違うもの。


でも、人間主義国はクラの時代と似てるのかな?


「イコロ国カント国の別名、人間主義国は人間以外が生まれると殺されるか国外追放にされるの」


「え…。で、でもヒメア様はそうはならなかったんですよね?」


「うん。でも、扱いはとってもひどかったよ。能力者は呪いだから、人間にいじめられたり両親には愛されなかったり。いっそ死んだ方が楽、なんて思う時もあったよ。人間のことがすごく(にく)くなっちゃったしね」


本当に辛い日々だった。


ただ能力者に生まれた、それだけでこんなにも生活が苦しいなんて。


いや、人間主義の人達からしたら“それだけ”のことじゃないと思うけど。


でも私だって愛されて育ちたかった。


「そんな時私を助けてくれた唯一の人間が、専属執事のカナタだったの。すごく優しくてね?とっても好きだったんだ」


「その人は…どうなったんですか?」


クラの声は震えていた。


きっとここにいないから、何かを察したのだろう。


でも、それは彼女が考えているよりも残酷なお話。


「カナタは人間で実験をしていたの。信じていたのに、私は彼の笑顔にだまされてた」


私は怒りを外に出すようにして言った。
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