報復を最愛の君と

後悔しない

その日のうちに、出発する時間を決めた。
ここを出るのは明日の昼頃。
それまでは、ここでお世話になることになった。
セランのあの言葉が気になって仕方がない。
「ヒメア?寝るよ?」
いつのまにか時刻は22時を回っている。
「あ、ごめん…。私のせいで電気消せなかったね」
ソラ以外のみんなは明るくてもスヤスヤと眠っている。
私は急いで横になった。
「ううん。俺は大丈夫だよ。それより、なにかあった?朝からずっとボーッとしてるよね?」
私のことを心配するようにソラが見つめてきた。
私はソラの隣に横になり、彼の顔をじっと見つめ返した。
「セランに言われたことが気になっちゃって」
「ああ、セランのことか。……“人間と一緒にいればいつか必ず後悔する”ってやつ?」
「っ…、うん。そう…かな。どう言う意味だったんだろってつい気になっちゃって」
本当はわかってる。
セランはきっと人間を傷つけるって思ってるんだ。
とっても優しい人だから、自分の評価を下げてでも民を守りたいって思ってるんだ。
「三大能力者の力があるからだろうね。人間は弱いから、能力者とどうしたって対等にはなれないと思ってる。それは、セランも同じなんだろう」
そう、人間たちは弱い生き物。
恐怖でしか能力者を抑圧できず、恐怖に怯える生き物。
イコロ国でずっと見てきたから知ってる。
「セランとも打ち解けられたらいいね」
「うん…」
私は差し出してくれたソラの手をギュッと握った。
それから、眠りに落ちていった。
ーーーーー
「随分とお世話になっちゃったね。いろいろとありがとうセレスト」
いよいよ、出発の時間になった。
ベルス国の国民も、セレストもセランもお見送りに来てくれた。
私はチラッとセランを見た。
けれど、彼はフイッと横を向いている。
そんな私の様子を見てか、セレストが私にこう言った。
「セランとなにかあったの?昨日の朝から不機嫌なんだよね。ヒメア、なにか知ってる?」
セランに聞こえないように、声をひそめて耳元で言った。
私も同じようにして言葉を返す。
「昨日の朝セランに言われたの。“人間と一緒にいればいつか必ず後悔する”って」
「……そういうことね」
セレストは納得したようにして、ひとりで頷いた。
それから、セランのところへ行ってしまった。
「ねえセラン。ボクはね、最後まで仲良くなれないのはなんかなぁって思うわけですよ。ということで!ヒメアとちょっと話してきて!」
そう言って、私の目の前にセランを連れてきた。
一瞬嫌そうに顔を歪めたけれど、セランは私に手を差し出した。
「着いてきて」
その言葉を断る理由もなく、私はセランの手をとった。
それから、セランに連れてこられたのは森だった。
「ここが落ち着くから」
森は銀狼の生命の源となる場所だ。
セランは銀狼だから、それが関係しているのだろう。
「それで?言いたいこと、あるんでしょ」
昨日とは違って優しい口調だった。
でも、どこか私を拒絶しているようにも感じた。
私はひとつ深呼吸をして、それからセランに言った。
「昨日、セランは後悔するって言ったよね。でも、私は絶対後悔なんかしないよ。ソラたちとやり遂げるって決めたことがあるから。ソラやスイが人間だって関係ない。私たちが心を通わせれば、後悔することはないよ」
私は真っ直ぐにセランを見て言った。
セランが怒ることはなかった。
けれど、悲しそうに私を見つめた後視線を地面に落とした。
「俺はヒメアに傷ついてほしくない。人間にだって傷ついてほしくない。関わらなければ、後悔することなんてないんだよ」
関わらなければ、カナタに裏切られて悲しくなることなんてなかっただろう。
それは便利な言葉だ。
でも、私はそれに逃げたくない。
「たとえなにがあったとしても、関わらない方が後悔するって私は思うんだ。だから、勇気を出してやって見たいかな」
私は微笑んだ。
セランにはヒメアとカノンの姿が重なって見えていた。
『関わらない方がきっと後悔する。人間たちと分かり合える世界は、それじゃあ作れないもの。勇気を出してやってみるの』
「…ヒメアはカノンに似てるよ」
私はクスッと笑った。
「それ、セレストにも言われたよ」
私たちは笑い合い、仲直りをして出発することができた。
< 64 / 64 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

作品設定図鑑

総文字数/100,496

その他33ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
ヴァンパイアに狙われています!〜運命は危険な出会い?!〜 恋星夢乃より 完成! 番外編『ヴァンパイア』 裏社会の私と表社会の貴方との境界線 雨晴華恋より 完成! 番外編『裏社会』 各話本編after 愛を知らない最強女子高生は最強総長様に溺愛される 橘美結より 番外編『愛最』 各話本編after集 報復を最愛の君と ヒメア・イコロより 番外編『報最』 キミに憧れたから 七瀬初音より 番外編『キミあこ』 本編after story 罪な僕は君と幸せになっていいだろうか 鷹栖蒼唯より 番外編 『罪君』
表紙を見る 表紙を閉じる
_________________ ʚ♡ɞ _________________ 家族にも友達にも虐げられる毎日 そんな日々が変わったのはあの日 貴方に出会ったから 愛を知らない&地味子ちゃん 橘美結(たちばなみゆ) × 女嫌い&最強の総長 黒瀬瑞生(くろせみずき) 黒瀬くんは女嫌いなはずなのに 「どうした?ほら、言ってみ?」 こんなに甘々なのはどうしてなの 「お願いだから俺以外にその可愛い顔見せないでね?」 黒瀬くんの全部が知りたいの _________________ ʚ♡ɞ _________________
裏社会の私と表社会の貴方との境界線

総文字数/142,606

恋愛(キケン・ダーク)105ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
_________________ ʚ♡ɞ _________________ 私は幸せになっていい人間じゃない 私が大切な人を… いつか素敵な恋ができたらと思っていた 私はずっと過去という呪いに縛られている 雨晴 華恋 裏社会最強マフィア 転生者&女神 × 真聖 乃亜 超頭脳の探偵一家の息子 暗殺一家の血も混じる 初めての恋に華恋は戸惑う 表社会の人とは結ばれちゃいけないと線を引くが…? 「絶対離さないし」 「ごめん、嫉妬で狂いそう」 私には甘々な彼 彼の独占欲と甘々な関係♡  _________________ ʚ♡ɞ _________________

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop