「鬼縛る花嫁」番外編・1「幸せ夫婦の夜のお悩み」
好きすぎ夫婦の仲直り
要が周りに炎を出現させて、二人の姿が照らされる。
「鎖子……だよな? 俺の花嫁……」
「はい。化け物ではございません。正真正銘、要様の妻でございます」
鎖子は左手の革手袋を外して、おそろいの結婚指輪を見せた。
要も自分の指輪を見せる。
「九鬼兜要……お前の夫だ」
「ふふ、要様の鬼妖力を間違えるなんてこと、ありません」
「どうして、こんな……俺を追って……?」
「はい」
「……何故……」
「何故って……わかりませんか……?」
先ほどまで、闇夜を駆ける軍人のような凛々しい振る舞いをしていた鎖子。
そんな彼女の瞳が、潤んで涙が溢れる。
「鎖子……?」
戸惑う要が、鎖子に手を伸ばす。
「九鬼兜要少佐殿……お手合わせを願います……!」
「えっ」
しかし、鎖子はレイピアを抜刀し要に向かう。
要がサーベルを抜いて、二人の切っ先での攻防が始まった。
「鎖子……!?」
二人の切っ先がぶつかり合って、小さな火花が散る。
鎖子の繊細で素早い剣技に、要は一歩退いた。
「要様……どうして、お一人でこんな山に!? あれでは刺激が足りませんでしたかっ!?」
「えっ……」
「でも、でも、でもでも鎖子だって……頑張って……おりますのに……!」
何度も二人の刃先が交わる。
「鎖子っ」
キーン! と要のサーベルの刃先を叩いて二人が一気に距離をとる。
鎖子が息を吐いて、レイピアを納刀した。
「鎖子……」
「もう……私はどうしたらいいのか、わかりません……」
「鎖子は頑張っている。素晴らしい剣技だ」
「け、剣技のことではありませんっ……わ、私に女性の魅力がないという事です……」
「魅力がない? 何を言う」
要は動揺し続けている。
「先程のメイドでは色気が足りなくて、要様を誘惑する事ができませんでしたでしょうっ!?」
「えっ」
「わ、私、先に帰ります……帰ったら、薄く透けた花魁のような短い襦袢を着て、媚薬のお香を炊いて待っています……!」
「な、なにを?」
「最後の、お、お色気大作戦です! 要様を今度こそ誘惑するのです……! 夫に愛されない妻の……努力……言わせないでくださいませ……」
メイド達に言われた最後の作戦を、素直に言ってしまう鎖子。
泣きながら走り去ろうとする鎖子を、要が後ろから抱きしめた。
「鎖子。鎖子、お願いだ。馬鹿な男の話を聞いてくれ」
「要様……?」
「愛されないって、どういう事なんだ。狂おしいほど愛している……!」
「でも……だって……」
耳元で囁かれ、耳に口づけされて、少し鎖子が脱力する。
「毎日、鎖子が可愛すぎて可愛すぎて、抱きたくなる。抱きしめたいという意味ではない。毎日、鎖子を俺のもので貫き、喘がせて朝まで俺の名前を言わせたくなる……二人で快楽に溺れたい。最近いつもそういう事を考えてしまうんだ」
「……要様……」
「この前まで、毎晩そうやって鎖子を抱いていただろう? 俺はケダモノかと……反省した……すまなかった……」
「嬉しかったです」
「あぁ……本当に、すまなかった……え?」
『大変でした』と責められる覚悟をしていた要は、鎖子の返答に驚く。
「鎖子は毎日、嬉しい日々でした」
「……嬉しい?」
「はい、嬉しく幸せな時間だとしか思いません。毎日、毎日……鎖子は要様に……沢山……だ、抱いてほしいのです……」
鎖子は要に向き直って、要に抱きつく。
「一週間も抱いてもらえなくって……私は、もう魅力がないのかと、哀しくて切なくって……」
まさかメイド達も、たった一週間抱かれていないだけで鎖子が悩んでいるとは思わなかった事だろう。
「魅力も色気も溢れているよ……それですぐ盛ってしまうから、性欲を減退させるために毎晩妖魔狩りをしていたんだ。さっきのメイドを見たら欲情して襲いかかりそうで……山に来た」
「どうして……? 襲ってください……せっかくの鎖子への欲情を減退なんて、させないでくださいませ……」
鎖子の、計算ではない潤んだ上目遣いに要はクラリとする。
「お前は……本当に可愛くて俺を狂わすな……またこんな短いスカートを履いて……」
寄り添った要の足に、鎖子の短いスカートの感触がズボン越しに伝わってきた。
「お嫌いですか……?」
「好きに決まっているだろう。今もこんな山のなかで、お前を抱きたくて堪らなくなっている」
鎖子もスカート越しに、要の熱さを感じる。
「……要様……私は要様となら……どこでだって……構いません」
「鎖子……」
一週間ぶりの深い口づけに、二人の息はすぐ熱くなりお互いの身体に触れ合う。
「俺が休憩場に使っている、九鬼兜の山小屋に行こう」
「はい……」
要に抱き上げられ、鎖子は要に強く抱きついた。
「可愛い過ぎる赤ずきんを、森の中で捕まえたぞ」
この前二人で読んだ、洋書だった。
「狼さま、いっぱい……私を食べてくださいませね」
「鎖子は無自覚に、俺を狂わせるな……」
「……そ、そうなのですか……?」
「あぁ、そうだ。いっぱい食べるよ。夢中でね」
山小屋のなか。
お互いの体温を感じながら、獣のように激しく求めあい交わった二人。
軍服のような服を着ながら交わる背徳感に、脳内が痺れそうになる。
「まだ楽しみがあるらしいから、家へ帰ろうか」
「はい……あ、お二人を待たせてしまいましたわ」
「そうか、それは二人に、悪いことをした」
要が鎖子を抱き上げ、次元門で馬車へ戻ると梅と岡崎が慌てて離れたのが見えた。
何やら手を握り合っていたような……。
待たせてしまった時間も、二人には不毛な時間ではなかったようだ。
「……岡崎」
「は、はい坊ちゃま!」
岡崎は動揺すると、要を坊ちゃまと素で呼んでしまうようだ。
「俺は次元門で鎖子と帰る。二人にはいつも心配をかけてすまない。一週間ほど休暇をとって二人でゆっくりしてくれ。九鬼兜の海の別荘でも行くといい。あとで差し入れもさせるよ」
「ぼ、坊ちゃま!? いやはや私は、それほど長い休暇など頂けません!」
「では、これは命令だ。二人で海の別荘の見回りを一週間かけてしてきてほしい。梅さん、岡崎を頼む」
要は微笑む。
「で、でも今は、鎖子お嬢様が心配でございます」
「梅さん、私はもう大丈夫です。ぜひゆっくりしてらしてください」
鎖子の艷やかな笑顔を見て、二人は安心したようだった。
次元門を抜けて、屋敷に辿り着く。
「鎖子……俺達は、ゆっくりはできないぞ……」
「え……?」
「朝まで……いや、三日三晩続くかもしれない」
「……私を求めてくださるという事ですか……?」
「そうだ。お前が愛しくて収まる気がしない……付き合ってもらうぞ、俺の可愛い花嫁」
「……要様、とっても嬉しいです……」
交わる行為は、要にも鎖子にも愛と喜びしかない。
二人で風呂に入ったあと……。
花魁のような薄襦袢をまとった鎖子を見た要は、爆発したという。
*:.。..。.:*・゜・おしまい*:.。. .。.:*・゜゜・**・
「鎖子……だよな? 俺の花嫁……」
「はい。化け物ではございません。正真正銘、要様の妻でございます」
鎖子は左手の革手袋を外して、おそろいの結婚指輪を見せた。
要も自分の指輪を見せる。
「九鬼兜要……お前の夫だ」
「ふふ、要様の鬼妖力を間違えるなんてこと、ありません」
「どうして、こんな……俺を追って……?」
「はい」
「……何故……」
「何故って……わかりませんか……?」
先ほどまで、闇夜を駆ける軍人のような凛々しい振る舞いをしていた鎖子。
そんな彼女の瞳が、潤んで涙が溢れる。
「鎖子……?」
戸惑う要が、鎖子に手を伸ばす。
「九鬼兜要少佐殿……お手合わせを願います……!」
「えっ」
しかし、鎖子はレイピアを抜刀し要に向かう。
要がサーベルを抜いて、二人の切っ先での攻防が始まった。
「鎖子……!?」
二人の切っ先がぶつかり合って、小さな火花が散る。
鎖子の繊細で素早い剣技に、要は一歩退いた。
「要様……どうして、お一人でこんな山に!? あれでは刺激が足りませんでしたかっ!?」
「えっ……」
「でも、でも、でもでも鎖子だって……頑張って……おりますのに……!」
何度も二人の刃先が交わる。
「鎖子っ」
キーン! と要のサーベルの刃先を叩いて二人が一気に距離をとる。
鎖子が息を吐いて、レイピアを納刀した。
「鎖子……」
「もう……私はどうしたらいいのか、わかりません……」
「鎖子は頑張っている。素晴らしい剣技だ」
「け、剣技のことではありませんっ……わ、私に女性の魅力がないという事です……」
「魅力がない? 何を言う」
要は動揺し続けている。
「先程のメイドでは色気が足りなくて、要様を誘惑する事ができませんでしたでしょうっ!?」
「えっ」
「わ、私、先に帰ります……帰ったら、薄く透けた花魁のような短い襦袢を着て、媚薬のお香を炊いて待っています……!」
「な、なにを?」
「最後の、お、お色気大作戦です! 要様を今度こそ誘惑するのです……! 夫に愛されない妻の……努力……言わせないでくださいませ……」
メイド達に言われた最後の作戦を、素直に言ってしまう鎖子。
泣きながら走り去ろうとする鎖子を、要が後ろから抱きしめた。
「鎖子。鎖子、お願いだ。馬鹿な男の話を聞いてくれ」
「要様……?」
「愛されないって、どういう事なんだ。狂おしいほど愛している……!」
「でも……だって……」
耳元で囁かれ、耳に口づけされて、少し鎖子が脱力する。
「毎日、鎖子が可愛すぎて可愛すぎて、抱きたくなる。抱きしめたいという意味ではない。毎日、鎖子を俺のもので貫き、喘がせて朝まで俺の名前を言わせたくなる……二人で快楽に溺れたい。最近いつもそういう事を考えてしまうんだ」
「……要様……」
「この前まで、毎晩そうやって鎖子を抱いていただろう? 俺はケダモノかと……反省した……すまなかった……」
「嬉しかったです」
「あぁ……本当に、すまなかった……え?」
『大変でした』と責められる覚悟をしていた要は、鎖子の返答に驚く。
「鎖子は毎日、嬉しい日々でした」
「……嬉しい?」
「はい、嬉しく幸せな時間だとしか思いません。毎日、毎日……鎖子は要様に……沢山……だ、抱いてほしいのです……」
鎖子は要に向き直って、要に抱きつく。
「一週間も抱いてもらえなくって……私は、もう魅力がないのかと、哀しくて切なくって……」
まさかメイド達も、たった一週間抱かれていないだけで鎖子が悩んでいるとは思わなかった事だろう。
「魅力も色気も溢れているよ……それですぐ盛ってしまうから、性欲を減退させるために毎晩妖魔狩りをしていたんだ。さっきのメイドを見たら欲情して襲いかかりそうで……山に来た」
「どうして……? 襲ってください……せっかくの鎖子への欲情を減退なんて、させないでくださいませ……」
鎖子の、計算ではない潤んだ上目遣いに要はクラリとする。
「お前は……本当に可愛くて俺を狂わすな……またこんな短いスカートを履いて……」
寄り添った要の足に、鎖子の短いスカートの感触がズボン越しに伝わってきた。
「お嫌いですか……?」
「好きに決まっているだろう。今もこんな山のなかで、お前を抱きたくて堪らなくなっている」
鎖子もスカート越しに、要の熱さを感じる。
「……要様……私は要様となら……どこでだって……構いません」
「鎖子……」
一週間ぶりの深い口づけに、二人の息はすぐ熱くなりお互いの身体に触れ合う。
「俺が休憩場に使っている、九鬼兜の山小屋に行こう」
「はい……」
要に抱き上げられ、鎖子は要に強く抱きついた。
「可愛い過ぎる赤ずきんを、森の中で捕まえたぞ」
この前二人で読んだ、洋書だった。
「狼さま、いっぱい……私を食べてくださいませね」
「鎖子は無自覚に、俺を狂わせるな……」
「……そ、そうなのですか……?」
「あぁ、そうだ。いっぱい食べるよ。夢中でね」
山小屋のなか。
お互いの体温を感じながら、獣のように激しく求めあい交わった二人。
軍服のような服を着ながら交わる背徳感に、脳内が痺れそうになる。
「まだ楽しみがあるらしいから、家へ帰ろうか」
「はい……あ、お二人を待たせてしまいましたわ」
「そうか、それは二人に、悪いことをした」
要が鎖子を抱き上げ、次元門で馬車へ戻ると梅と岡崎が慌てて離れたのが見えた。
何やら手を握り合っていたような……。
待たせてしまった時間も、二人には不毛な時間ではなかったようだ。
「……岡崎」
「は、はい坊ちゃま!」
岡崎は動揺すると、要を坊ちゃまと素で呼んでしまうようだ。
「俺は次元門で鎖子と帰る。二人にはいつも心配をかけてすまない。一週間ほど休暇をとって二人でゆっくりしてくれ。九鬼兜の海の別荘でも行くといい。あとで差し入れもさせるよ」
「ぼ、坊ちゃま!? いやはや私は、それほど長い休暇など頂けません!」
「では、これは命令だ。二人で海の別荘の見回りを一週間かけてしてきてほしい。梅さん、岡崎を頼む」
要は微笑む。
「で、でも今は、鎖子お嬢様が心配でございます」
「梅さん、私はもう大丈夫です。ぜひゆっくりしてらしてください」
鎖子の艷やかな笑顔を見て、二人は安心したようだった。
次元門を抜けて、屋敷に辿り着く。
「鎖子……俺達は、ゆっくりはできないぞ……」
「え……?」
「朝まで……いや、三日三晩続くかもしれない」
「……私を求めてくださるという事ですか……?」
「そうだ。お前が愛しくて収まる気がしない……付き合ってもらうぞ、俺の可愛い花嫁」
「……要様、とっても嬉しいです……」
交わる行為は、要にも鎖子にも愛と喜びしかない。
二人で風呂に入ったあと……。
花魁のような薄襦袢をまとった鎖子を見た要は、爆発したという。
*:.。..。.:*・゜・おしまい*:.。. .。.:*・゜゜・**・

