蓮音(れおん) ―君に遺した約束―
『守る』
ーー
あの夜から――
蓮は
ますます私に優しくなっていった。
普段は相変わらず無口で
多くは語らないけど
それでも
ふとした時に見せる優しさが
前よりずっと
あたたかくなっている気がした。
「……ちゃんと食ってんのか?」
「寒くねぇか?」
「疲れたらすぐ言えよ」
些細な言葉が
自然に口から出てくる蓮。
今まで
こんなに心配されたことなんて
なかったかもしれない。
そんな蓮を見てると――
胸の奥が
じんわりと熱くなる。
「……ありがとう、蓮くん」
私がそう言うと
蓮は少し照れくさそうに
目を逸らした。
「……別に」
ほんの一言なのに
なんだか胸がキュンとする。
ーー
夜。
蓮の部屋。
小さなソファに並んで座りながら
静かな音だけが流れていた。
ふたりきりの、静かな時間。
私は
そっとお腹に手を当てる。
まだ全然膨らんではいないけど
ここにもう一つの命がいると思うと
不思議と胸が温かくなる。
「……不思議だね」
私がぽつりと呟くと
蓮はゆっくり私の手の上に
自分の手を重ねてきた。
「お前の腹ん中に
俺の子がいるなんて…な」
その声は
少しだけ震えて聞こえた。
「……怖い?」
思わず聞いてしまった。
蓮は
少しだけ間を空けてから
静かに首を振った。
「……怖くねぇわけじゃねぇ
でも――
守りてぇ
お前も、この子も」
短い言葉なのに
その中に込められた想いが
胸の奥に
まっすぐ届いてきた。
涙が、じわっと滲む。
私はそっと蓮に寄りかかる。
「…蓮くんがいてくれたら、大丈夫」
蓮の腕が
そっと私の肩を抱き寄せてくれた。
「……任せとけ」
低く囁くその声に
自然と
涙が溢れ出して止まらなかった。
こうして、少しずつ
ふたりの “家族” が
始まっていこうとしていた。
ーー