わがおろか ~我がままな女、愚かなおっさんに苦悩する~
妄想に対する疑念 (アカイ40)
なんという素晴らしい展開! と感動すると同時に俺の心に鋭い痛みが走る。イヤな予感が過る。
待てよ? するとシノブは王子を護るものだったということか? 戦ったのならそうだよな。警護のもの。よくある警護のくノ一が主君に恋心を抱く……えっ嘘? ふざけるな冗談じゃない! でもでもでも俺はその設定は大好きだったじゃないか! なのに今じゃ心の底からに憎い設定になってしまった!
報われない恋心とかふざけんな! とずっと思っていたのに……俺はいま真剣に報われて貰いたくないという心になっている! これが大人になるということなのか? ポッと出のよく分からん男とくっつけさせるぐらいなら一生独身のままでいさせろ! とか思っていたのにそんなことは絶対にさせない! 俺以外の男には絶対に結ばせない。あれ? 考えてみるとそのポッと出の男って、この場合は俺?
「そういうことなの。それで私はそのね。王子の警護をしているものでね。まぁ影として城を巡回する任務を請け負っていて、つまりはそういうことなの」
なんだよそのいつもハキハキした物言いなシノブらしくない歯切れの悪い説明は……俺の中で育まれている疑念がむくむくと成長して膨らんでいく。怪物だ。見て見て僕の中の怪物がこんなに大きく育ったんだ状態。
最悪を、考えよう。これ以上に無く最悪な関係を……シノブと王子はできている。これだな、と俺はすぐに思いつくも眩暈に襲われた。だったらなんで俺は頑張ってんだ? いやいやだからそうではない、これは自分の想像だ。しかもとびっきり最悪のもので自己中毒を起こすレベルの。
まずここから、否定しよう。そうしないと心が苦しすぎる。シノブと王子はできていない……なんてこった否定する材料が、無い! だから俺はシノブの言動に注意を向ける。今まで隠していたのはつまりそういう関係であったからではないかと。その王子と実は恋人関係であるから、こちらからのアプローチの類は全力で拒否っていたということでは?
仮にだ、仮にだよ、シノブが俺に出会う以前は恋を知らない美少女であったら……そんな設定の美少女キャラばかりが何故かはびこる世の中だが、そうであったとしたらこの俺に惚れるのが道理ではないだろうか? 違うぞ己惚れるなアカイ! 自分の年齢と容姿を弁えろ、と俺はアカイに注意した。
こんな愚かな妄想を抱いてどうする? だいたいシノブがこんな自分を簡単に愛するとか、そんな白痴的な娘だったら駄目だろうに。駄目な俺に出会ってすぐに惚れる女とかなんか信用できん。ホイホイと他の男に浮気しそうだし、強く迫られたら許す女だったら困るだろ! ビッチじゃんか! 俺にだけ許さないビッチとか純粋な悪魔じゃんか!
まぁ正直なところそれはそれでも実のところあまり問題はないが、それは駄目駄目おかしいと俺の弁えと道徳が先に立ってしまうので、よっていまのは、却下。シノブは普通に恋する乙女だ。よって好きな男がいるのは当然。好きな女の恋心ぐらい認めてやらないなんて心の狭い男のやることだ。俺はそんなことは、しない。だって俺はあいつらみたいな下らない男とは違うのだからな。
よってシノブは王子のことが好き……まぁあれだ、アイドルに恋するのと同じノリだ。そんなことでは俺は嫉妬なんてしない。それで王子の方からシノブを……これは少し可能性は低いのでは? そうだ低い。それにそうだスレイヤーが言っていたな。シノブは王子のことが好きだって。フフッ、馬鹿が愚か者め見くびりおってからに。この俺が若い娘の気まぐれな恋心でいちいち惑わされるようなみっともない男だと思ったのか?
そうだ言ったじゃあないか、最後は俺の横にいればいいって……羅王ぽくてカッコいいな俺。でもあいつは負けてしかも死んだな……まぁそこはこの場合はいい。よって許す。なにを? 決まっているじゃないか。シノブの恋を、嫁になる前の青春の恋を、実らぬ恋を、綺麗な思い出を、俺は広い心で許可してやるのだ。
王子はシノブに愛されてムカつくがまさかシノブに恋しているなんてことは有り得ない……それもムカつくなぁ。なんで俺が見知らぬ王子から見下されているような気分にさせられるんだ? もし出会ってシノブを軽く扱ったらぶん殴ってしまいそうだ……なんて奴だ許せん、だからやめろ俺。
全部俺の妄想だろうが。妄想で嫉妬しない、でも待てお前。嫉妬ってだいたい妄想の産物では? もう考えるな。そう悪く考えるな。王子はだな、シノブの恋心に気付いているがそれに対して立場上気づかない振りをしている、これだ。
なんで気づかねぇんだよこの野郎! シノブがどれだけお前のことを好きだったかなんで、受け止めてやらねぇんだ! ちょっ待てよ俺! これは主人公の親友ポジションの台詞だろうが。俺はそっちに収まりたくないんだよ。でも親友キャラって良い感じにリアルさのある理想的な彼女ができて幸せになるのがお定まりだよな。だったらそっちの方が……違うの! 俺は主人公側なの!
というか考えてみると王子に王妃候補者ができたって万歳じゃん。けどそいつが悪女で王子を騙そうとしているんだよな……シノブによれば……シノブによれば?
待てよ? するとシノブは王子を護るものだったということか? 戦ったのならそうだよな。警護のもの。よくある警護のくノ一が主君に恋心を抱く……えっ嘘? ふざけるな冗談じゃない! でもでもでも俺はその設定は大好きだったじゃないか! なのに今じゃ心の底からに憎い設定になってしまった!
報われない恋心とかふざけんな! とずっと思っていたのに……俺はいま真剣に報われて貰いたくないという心になっている! これが大人になるということなのか? ポッと出のよく分からん男とくっつけさせるぐらいなら一生独身のままでいさせろ! とか思っていたのにそんなことは絶対にさせない! 俺以外の男には絶対に結ばせない。あれ? 考えてみるとそのポッと出の男って、この場合は俺?
「そういうことなの。それで私はそのね。王子の警護をしているものでね。まぁ影として城を巡回する任務を請け負っていて、つまりはそういうことなの」
なんだよそのいつもハキハキした物言いなシノブらしくない歯切れの悪い説明は……俺の中で育まれている疑念がむくむくと成長して膨らんでいく。怪物だ。見て見て僕の中の怪物がこんなに大きく育ったんだ状態。
最悪を、考えよう。これ以上に無く最悪な関係を……シノブと王子はできている。これだな、と俺はすぐに思いつくも眩暈に襲われた。だったらなんで俺は頑張ってんだ? いやいやだからそうではない、これは自分の想像だ。しかもとびっきり最悪のもので自己中毒を起こすレベルの。
まずここから、否定しよう。そうしないと心が苦しすぎる。シノブと王子はできていない……なんてこった否定する材料が、無い! だから俺はシノブの言動に注意を向ける。今まで隠していたのはつまりそういう関係であったからではないかと。その王子と実は恋人関係であるから、こちらからのアプローチの類は全力で拒否っていたということでは?
仮にだ、仮にだよ、シノブが俺に出会う以前は恋を知らない美少女であったら……そんな設定の美少女キャラばかりが何故かはびこる世の中だが、そうであったとしたらこの俺に惚れるのが道理ではないだろうか? 違うぞ己惚れるなアカイ! 自分の年齢と容姿を弁えろ、と俺はアカイに注意した。
こんな愚かな妄想を抱いてどうする? だいたいシノブがこんな自分を簡単に愛するとか、そんな白痴的な娘だったら駄目だろうに。駄目な俺に出会ってすぐに惚れる女とかなんか信用できん。ホイホイと他の男に浮気しそうだし、強く迫られたら許す女だったら困るだろ! ビッチじゃんか! 俺にだけ許さないビッチとか純粋な悪魔じゃんか!
まぁ正直なところそれはそれでも実のところあまり問題はないが、それは駄目駄目おかしいと俺の弁えと道徳が先に立ってしまうので、よっていまのは、却下。シノブは普通に恋する乙女だ。よって好きな男がいるのは当然。好きな女の恋心ぐらい認めてやらないなんて心の狭い男のやることだ。俺はそんなことは、しない。だって俺はあいつらみたいな下らない男とは違うのだからな。
よってシノブは王子のことが好き……まぁあれだ、アイドルに恋するのと同じノリだ。そんなことでは俺は嫉妬なんてしない。それで王子の方からシノブを……これは少し可能性は低いのでは? そうだ低い。それにそうだスレイヤーが言っていたな。シノブは王子のことが好きだって。フフッ、馬鹿が愚か者め見くびりおってからに。この俺が若い娘の気まぐれな恋心でいちいち惑わされるようなみっともない男だと思ったのか?
そうだ言ったじゃあないか、最後は俺の横にいればいいって……羅王ぽくてカッコいいな俺。でもあいつは負けてしかも死んだな……まぁそこはこの場合はいい。よって許す。なにを? 決まっているじゃないか。シノブの恋を、嫁になる前の青春の恋を、実らぬ恋を、綺麗な思い出を、俺は広い心で許可してやるのだ。
王子はシノブに愛されてムカつくがまさかシノブに恋しているなんてことは有り得ない……それもムカつくなぁ。なんで俺が見知らぬ王子から見下されているような気分にさせられるんだ? もし出会ってシノブを軽く扱ったらぶん殴ってしまいそうだ……なんて奴だ許せん、だからやめろ俺。
全部俺の妄想だろうが。妄想で嫉妬しない、でも待てお前。嫉妬ってだいたい妄想の産物では? もう考えるな。そう悪く考えるな。王子はだな、シノブの恋心に気付いているがそれに対して立場上気づかない振りをしている、これだ。
なんで気づかねぇんだよこの野郎! シノブがどれだけお前のことを好きだったかなんで、受け止めてやらねぇんだ! ちょっ待てよ俺! これは主人公の親友ポジションの台詞だろうが。俺はそっちに収まりたくないんだよ。でも親友キャラって良い感じにリアルさのある理想的な彼女ができて幸せになるのがお定まりだよな。だったらそっちの方が……違うの! 俺は主人公側なの!
というか考えてみると王子に王妃候補者ができたって万歳じゃん。けどそいつが悪女で王子を騙そうとしているんだよな……シノブによれば……シノブによれば?