わがおろか ~我がままな女、愚かなおっさんに苦悩する~
俺、信じるしかない (アカイ43)
化粧が濃い目というか別人みたいに彫りの深い顔になっているカオルさん……というかこっちが素なんだよなと俺はあの変装時の印象の薄く記憶にも曖昧になっている彼女のことを思い出すと哀しい気持ちになった。それからスレイヤーが続いた。
「だがこうなるのは必然であったのかもしれない。アカイ、どうやらシノブは元の力を取り戻しつつある」
「取り戻しつつある、ってなんだ?」
「先ほど巡回していた忍者の報告によると若い娘がチンピラと立ち合いをしており、見事な体術でもって倒したとのことだ。そしてその技はどうやらうちの里のものとのこと……まず間違いなくシノブだ」
「そんな馬鹿な! シノブはそんなに強いはずがない」
俺がそう返すとカオルが笑った。
「ハハッまさかそんな言葉を聞けるとはね。シノブちゃんが強くなくて弱いとか世界最強の英雄の類でないと聞けないね。もしくはうちらの王子様ぐらいか」
王子! と俺はピクリと苛立ちを覚えたがカオルの胸のふくらみを見て心を落ち着かせた。やはり、でかい。怒りも吸い込んでいくぐらいだ。
「アカイ殿にはその認識であろうが実際のシノブの戦闘力は里一と言ってもよく、戦うとなったら我々が総出で挑むという、そういうレベルなのだ」
「そんな……」
なんというチートくノ一……最高過ぎると俺は歓喜に震えた。美少女で賢く最強のくノ一を嫁に出来るとか俺の憧れだったじゃないか。どこまでも理想の嫁になってくれる素晴らしい……絶対に誰にも渡さん! というか忍者だったのね。それはそうだ兄が忍者なら妹も忍者に決まっているだろ。忍者は一族の家業なはずだしさ。
「驚きだ……」
「ショックだろうが事実なのだ」
「なぜ体調不良で戦えなくなっていたのではなく走ることすら困難なぐらい弱くなったのかは私達にも分からないんだけど、アカイの想像の何十倍もあの子は強いよ。そしてねチンピラを倒した後に巡回のものが尾行すると宿屋に入っていってそれから窓から跳び立っていったようね。これを見るに、半分ぐらいは力を取り戻していると見立てていいかもしれないわ」
憂い顔となったカオリを見ながら俺は思う。あの地味なすっぴん顔の方が良かったなと。いまのカオリはちょっと緊張を覚えるタイプのギャル系な感じである。
「事実なら半分程度で男を叩き伏せられるのか」
「本来の力であったら殺していただろうな。その最強の忍者であるシノブが城を目指している。たった一人でな」
「止めないと」
俺が言うとスレイヤーとカオルは頷いた。
「ということは協力をしてくれるということでいいのね?」
「……基本的には」
「全面的ではないと? アカイ殿、それでは困るのだ。あなたの魔力はかなりの脅威でありこちらとしては対処に苦慮する。それにあなたはいわばシノブに騙されているといってもよく、我らの妹の被害者といえる。それを敵として相手をするのはこちらとしては」
「俺は被害者ではない」
俺の言葉にスレイヤーは言葉を詰まらせカオルは目を見開いた。
「俺はシノブの同行者だ。同意の元でのな。その旅の目的である使命を共に果たす為にだ」
「しかしだアカイ殿。シノブはあなたに対して確実な嘘偽りを」
「俺は騙されるような男ではない」
カオルは声を押し殺しながら表情で笑いスレイヤーは口を真一文字に引き締める。
「敢えて騙されている振りをしているといっていいかもな。シノブの言葉には誇張や誤魔化しがあるのは当然だ。俺もシノブには隠しごとはたくさんあるが、それを以って俺が彼女を騙しているわけではない。スレイヤーはシノブの話の細かい部分のことを嘘だとして信じていないのだろうが、そんなところはまさに些細なことだ。肝心なのはそこではない。もっと高く広く大きな視点から俯瞰することが大事だ。違うか?」
スレイヤーは固まったままアカイを見、カオルはその様子を楽しげに眺めていた。
「シノブの言葉で最も聞くべきところはなにか? それはいま王子という存在に危機が迫っていること、これだ。スレイヤーの言うように個人的な怨恨や思い込みだけで、シノブが全てを投げ打ち命を賭けてまでこれを行うか? 俺はそうは思わない。俺は知っている。旅で知った。シノブの意思やその頑張りをそしてそのプライドの高さを。そんな彼女がこんな初対面の妙な男である俺に頭を下げてまで同行を願ったんだ。そんな俺が信じなくてどうする。俺は信じる以外の心を、持てない。持てるはずがないだろ。たとえ世界を敵に回しても俺だけは彼女の使命の傍にいて同行する。これを阻止しようとするものは等しく俺とシノブの敵だ」
カオルはスレイヤーの肩に手を置きそれから二人に対して告げた。
「お城で不穏な空気が漂っているという情報が入ってきているじゃない? あれってどうなったの?」
「だがこうなるのは必然であったのかもしれない。アカイ、どうやらシノブは元の力を取り戻しつつある」
「取り戻しつつある、ってなんだ?」
「先ほど巡回していた忍者の報告によると若い娘がチンピラと立ち合いをしており、見事な体術でもって倒したとのことだ。そしてその技はどうやらうちの里のものとのこと……まず間違いなくシノブだ」
「そんな馬鹿な! シノブはそんなに強いはずがない」
俺がそう返すとカオルが笑った。
「ハハッまさかそんな言葉を聞けるとはね。シノブちゃんが強くなくて弱いとか世界最強の英雄の類でないと聞けないね。もしくはうちらの王子様ぐらいか」
王子! と俺はピクリと苛立ちを覚えたがカオルの胸のふくらみを見て心を落ち着かせた。やはり、でかい。怒りも吸い込んでいくぐらいだ。
「アカイ殿にはその認識であろうが実際のシノブの戦闘力は里一と言ってもよく、戦うとなったら我々が総出で挑むという、そういうレベルなのだ」
「そんな……」
なんというチートくノ一……最高過ぎると俺は歓喜に震えた。美少女で賢く最強のくノ一を嫁に出来るとか俺の憧れだったじゃないか。どこまでも理想の嫁になってくれる素晴らしい……絶対に誰にも渡さん! というか忍者だったのね。それはそうだ兄が忍者なら妹も忍者に決まっているだろ。忍者は一族の家業なはずだしさ。
「驚きだ……」
「ショックだろうが事実なのだ」
「なぜ体調不良で戦えなくなっていたのではなく走ることすら困難なぐらい弱くなったのかは私達にも分からないんだけど、アカイの想像の何十倍もあの子は強いよ。そしてねチンピラを倒した後に巡回のものが尾行すると宿屋に入っていってそれから窓から跳び立っていったようね。これを見るに、半分ぐらいは力を取り戻していると見立てていいかもしれないわ」
憂い顔となったカオリを見ながら俺は思う。あの地味なすっぴん顔の方が良かったなと。いまのカオリはちょっと緊張を覚えるタイプのギャル系な感じである。
「事実なら半分程度で男を叩き伏せられるのか」
「本来の力であったら殺していただろうな。その最強の忍者であるシノブが城を目指している。たった一人でな」
「止めないと」
俺が言うとスレイヤーとカオルは頷いた。
「ということは協力をしてくれるということでいいのね?」
「……基本的には」
「全面的ではないと? アカイ殿、それでは困るのだ。あなたの魔力はかなりの脅威でありこちらとしては対処に苦慮する。それにあなたはいわばシノブに騙されているといってもよく、我らの妹の被害者といえる。それを敵として相手をするのはこちらとしては」
「俺は被害者ではない」
俺の言葉にスレイヤーは言葉を詰まらせカオルは目を見開いた。
「俺はシノブの同行者だ。同意の元でのな。その旅の目的である使命を共に果たす為にだ」
「しかしだアカイ殿。シノブはあなたに対して確実な嘘偽りを」
「俺は騙されるような男ではない」
カオルは声を押し殺しながら表情で笑いスレイヤーは口を真一文字に引き締める。
「敢えて騙されている振りをしているといっていいかもな。シノブの言葉には誇張や誤魔化しがあるのは当然だ。俺もシノブには隠しごとはたくさんあるが、それを以って俺が彼女を騙しているわけではない。スレイヤーはシノブの話の細かい部分のことを嘘だとして信じていないのだろうが、そんなところはまさに些細なことだ。肝心なのはそこではない。もっと高く広く大きな視点から俯瞰することが大事だ。違うか?」
スレイヤーは固まったままアカイを見、カオルはその様子を楽しげに眺めていた。
「シノブの言葉で最も聞くべきところはなにか? それはいま王子という存在に危機が迫っていること、これだ。スレイヤーの言うように個人的な怨恨や思い込みだけで、シノブが全てを投げ打ち命を賭けてまでこれを行うか? 俺はそうは思わない。俺は知っている。旅で知った。シノブの意思やその頑張りをそしてそのプライドの高さを。そんな彼女がこんな初対面の妙な男である俺に頭を下げてまで同行を願ったんだ。そんな俺が信じなくてどうする。俺は信じる以外の心を、持てない。持てるはずがないだろ。たとえ世界を敵に回しても俺だけは彼女の使命の傍にいて同行する。これを阻止しようとするものは等しく俺とシノブの敵だ」
カオルはスレイヤーの肩に手を置きそれから二人に対して告げた。
「お城で不穏な空気が漂っているという情報が入ってきているじゃない? あれってどうなったの?」