わがおろか ~我がままな女、愚かなおっさんに苦悩する~
燃えて飛ぶ男 (アカイ42)
どうしよう、と俺は扉をずっと見つめながら狼狽えていた。あの時から身体が痺れて、動けない。どうしたらいいの? と俺の身体は小刻みに震えながら、部屋の真ん中で馬鹿みたいに突っ立って動けない。俺はこういう状況だと動けないんだよ。子供の頃からそれと一緒。だっだけど俺はもう子供じゃなくて大人だから、動ける!
「シノブ、待って」
ようやく小声でそう言いながら動くと、足がもつれて転んでしまい額を打った痛みで床の上を転がり回る。
「痛い、どうしよう! 痛いどうしよう!」
痛みによる混乱も加わるが俺は考える。きっと俺はまた余計なことを言ってしまったと。どうしてあんなに怒ったのか分からないけど、あのクールなシノブが泣きわめいて部屋から出ていくんだから、俺はきっと相当に愚かなことを言ったに違いない。そうでなければシノブは泣かないしこんな夜に外に出ていかない。
「俺の馬鹿俺の馬鹿俺の馬鹿!」
俺は自分の頭を叩きながら罵る。出来ればシノブに反省するこの姿を見てもらいたいが、どこにもいないし見てはいない。だったら無駄だと俺は反省のポーズをやめ、立ち上がり部屋の中を性懲りもなくうろつき回る。我ながら愚かだと思いつつもグルグル回る。
探しに行ったら怒らないかな? と思うと同時に違う考えも浮かぶ。こういう場合は引き留めるのが彼氏の務めだろ! そうか! そうだよなと思うもまた考え込む。でも俺って彼氏じゃないよな。今はまだただの同行人に過ぎないし、このまま部屋で待っていた方が。そうしたら頭の冷えたシノブが帰ってくるのを待っていれば……そうだよいつか帰ってくるよ、きっといつかあの人のように……つまりそれって帰って来ないってこと? 待っても女は帰って来ないって俺はよく知っている。そしてその女は別の男と。
「そんなことできるか!」
俺はそう叫びと同時に部屋から飛び出し夜のなかへと駆けだした。もしもシノブが悪い奴に攫われたりしたら! 俺は破滅だ! 俺は終わってしまう。世界を滅ぼすしかなくなる! そう、シノブはいまかなり危険な状態。身体が元々弱いのに精神が情緒不安定状態。もしも下司の極みみたいな悪い奴に優しくされたら、身も心を委ね奪われてしまうかもしれない。ふざけるんじゃぁない! 美味しいところを取るな! 俺には苦いところばっか食わせやがってよぉ!
「それは俺のものだああああ!」
寝取られる想像をすると同時にアカイは無心のまま絶叫し、その身体は炎に包まれ闇夜の空を飛ぶ。俺にこんな力が! なんということはいまのアカイは考えはしない。救世主ならこんなことは出来て当然だということで不思議にも思わない。俺の愛の炎ならこれぐらいなんのことはない! と無意識下で本気に思っているのである。それが、アカイの炎なのである。情欲の賜物である。
「どこだあああシノブぅううう」
アカイは叫びつつあちこち捜すものの、いっぽうそのシノブの方はというとチンピラを叩きのめし、いまは宿屋に戻って忍者衣装に着替えていたのであった。すれ違うというか反対方向に向かい合う二人。やっぱり待っていた方がよかったねとなる悲喜劇。これを以ってこれを見るに、やはりもとから噛み合うはずもなかったのである。
「何者だ!」
下の闇から声が聞こえたのでアカイは飛ぶのをやめ声の方向へと降り立っていく。着地と同時にアカイは自分が囲まれたことを知るも、意に返さなかった。無意識が、終わる。アカイのつまりは俺の自意識が回転しだす。俺は鼻で笑いながらちょっと照れながら尋ねた。自慢に聞えたら悪いねどうも。
「年頃18、19ぐらいの清楚で綺麗な娘を見なかったか? ちなみに言っておくがそれは俺の嫁なんだけどさ」
「お前は何を言っているんだ!」
「シノブを見なかったと聞いているんだ!」
俺が大声で尋ね返すとどよめきが広まった。
「シッシノブ殿を探しているのか?」
知り合い? と俺が不審がっていると囲っていた者たちが前に出て来て姿を現した。忍者装束の男が三人。その中の一人で俺の顔をじっと眺めてから言った。
「もしやあなたはアカイ殿では」
「そうだがなんだ?」
「やはりそうか。そしてシノブ殿が行方不明に……どうかご同行を願います。御安心を、我々は味方であります」
どういうことだと俺は首を捻るも悪意がまるで感じなかったために忍者三人のあとに続くと、やがて駐屯所のような場所に辿り着き中に入ると俺は反射的に声が出た。別人なのにどうしてかすぐに分かった。その理由は言うまでもないことだが。
「カオルさんにスレイヤー!」
「まさかここで再会するとはね。そう、あんたも捜しているというわけか」
カオルことカオリが答えた。
「シノブ、待って」
ようやく小声でそう言いながら動くと、足がもつれて転んでしまい額を打った痛みで床の上を転がり回る。
「痛い、どうしよう! 痛いどうしよう!」
痛みによる混乱も加わるが俺は考える。きっと俺はまた余計なことを言ってしまったと。どうしてあんなに怒ったのか分からないけど、あのクールなシノブが泣きわめいて部屋から出ていくんだから、俺はきっと相当に愚かなことを言ったに違いない。そうでなければシノブは泣かないしこんな夜に外に出ていかない。
「俺の馬鹿俺の馬鹿俺の馬鹿!」
俺は自分の頭を叩きながら罵る。出来ればシノブに反省するこの姿を見てもらいたいが、どこにもいないし見てはいない。だったら無駄だと俺は反省のポーズをやめ、立ち上がり部屋の中を性懲りもなくうろつき回る。我ながら愚かだと思いつつもグルグル回る。
探しに行ったら怒らないかな? と思うと同時に違う考えも浮かぶ。こういう場合は引き留めるのが彼氏の務めだろ! そうか! そうだよなと思うもまた考え込む。でも俺って彼氏じゃないよな。今はまだただの同行人に過ぎないし、このまま部屋で待っていた方が。そうしたら頭の冷えたシノブが帰ってくるのを待っていれば……そうだよいつか帰ってくるよ、きっといつかあの人のように……つまりそれって帰って来ないってこと? 待っても女は帰って来ないって俺はよく知っている。そしてその女は別の男と。
「そんなことできるか!」
俺はそう叫びと同時に部屋から飛び出し夜のなかへと駆けだした。もしもシノブが悪い奴に攫われたりしたら! 俺は破滅だ! 俺は終わってしまう。世界を滅ぼすしかなくなる! そう、シノブはいまかなり危険な状態。身体が元々弱いのに精神が情緒不安定状態。もしも下司の極みみたいな悪い奴に優しくされたら、身も心を委ね奪われてしまうかもしれない。ふざけるんじゃぁない! 美味しいところを取るな! 俺には苦いところばっか食わせやがってよぉ!
「それは俺のものだああああ!」
寝取られる想像をすると同時にアカイは無心のまま絶叫し、その身体は炎に包まれ闇夜の空を飛ぶ。俺にこんな力が! なんということはいまのアカイは考えはしない。救世主ならこんなことは出来て当然だということで不思議にも思わない。俺の愛の炎ならこれぐらいなんのことはない! と無意識下で本気に思っているのである。それが、アカイの炎なのである。情欲の賜物である。
「どこだあああシノブぅううう」
アカイは叫びつつあちこち捜すものの、いっぽうそのシノブの方はというとチンピラを叩きのめし、いまは宿屋に戻って忍者衣装に着替えていたのであった。すれ違うというか反対方向に向かい合う二人。やっぱり待っていた方がよかったねとなる悲喜劇。これを以ってこれを見るに、やはりもとから噛み合うはずもなかったのである。
「何者だ!」
下の闇から声が聞こえたのでアカイは飛ぶのをやめ声の方向へと降り立っていく。着地と同時にアカイは自分が囲まれたことを知るも、意に返さなかった。無意識が、終わる。アカイのつまりは俺の自意識が回転しだす。俺は鼻で笑いながらちょっと照れながら尋ねた。自慢に聞えたら悪いねどうも。
「年頃18、19ぐらいの清楚で綺麗な娘を見なかったか? ちなみに言っておくがそれは俺の嫁なんだけどさ」
「お前は何を言っているんだ!」
「シノブを見なかったと聞いているんだ!」
俺が大声で尋ね返すとどよめきが広まった。
「シッシノブ殿を探しているのか?」
知り合い? と俺が不審がっていると囲っていた者たちが前に出て来て姿を現した。忍者装束の男が三人。その中の一人で俺の顔をじっと眺めてから言った。
「もしやあなたはアカイ殿では」
「そうだがなんだ?」
「やはりそうか。そしてシノブ殿が行方不明に……どうかご同行を願います。御安心を、我々は味方であります」
どういうことだと俺は首を捻るも悪意がまるで感じなかったために忍者三人のあとに続くと、やがて駐屯所のような場所に辿り着き中に入ると俺は反射的に声が出た。別人なのにどうしてかすぐに分かった。その理由は言うまでもないことだが。
「カオルさんにスレイヤー!」
「まさかここで再会するとはね。そう、あんたも捜しているというわけか」
カオルことカオリが答えた。