君ともう一度、 恋を始めるために
4年も前のことなのに、未だに涙が流れる理由は柚葉にもわからない。
単純に悲しみや辛さからくる感情ではなく、懐かしさを含んだ幸せの記憶が柚葉の心をざわつかせている。

「ママ、髪を結んで」
「はいはい、ちょっと待ってね」

莉奈の朝食を作り、保育園の用意をして、その間に自分の身支度もする。
シングルマザーの朝はとてつもなく忙しい。
柚葉は走り回るように準備をしながら、ふとリビングで足を止めた。
そして手にしたのはテーブルに置かれていた一通の封筒。
差出人は実家の父からだが、中には柚葉宛の手紙が封筒ごと入っている。

―――いつまでこんなことを続けるつもりだろう?

心の中でつぶやきながら、柚葉は父から転送されてきた封書を手に取った。
住所は実家になっているがあて先は間違いなく柚葉。そして差出人は・・・あの人。
柚葉はしばらく未開封のままの封筒を眺めていた。

―――あれ?

柚葉宛の封筒をそのまま戻そうとして、中に走り書きらしき手紙を見つけた。
それは父からのもので、『元気でいますか?今年もまた手紙が来たぞ。いい加減会って話をするべきじゃないのか?子供のことを考えるといつまでもこのままではよくないぞ』普段多くを語らない父にしては珍しい手紙。
柚葉はしばらく父の手紙を見つめていた。
父の言う通り、あと数年すれば莉奈は小学校に上がる。
そうなる前に生活の基盤を整えて、彼と話をしなくてはいけない。
この時、柚葉は行動を起こす決心を固めていた。
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