Good day ! 4【書籍化】
ファミリーデー
「あっ、おとうさんだ!」
翼が声を上げ、舞も振り返る。
「ほんとだ、おとうさん!」
笑顔で駆け寄ろうとした二人は、大和が他の子どもたちと話しているのを見ると、足を止めた。
パイロットの制服に身を包んだ大和が、子どもたちに囲まれて写真を撮っている。
どうやら翼も舞も、声をかけていいのかどうかためらっている様子だった。
「えらいわね、翼くんも舞ちゃんも。翔一なんて、見て。一目散にお父さんに飛びついちゃった」
呆れたような口調の彩乃に、恵真は微笑む。
「翔一くん、お父さんが大好きですものね」
「翼くんと舞ちゃんもそうでしょ? だけどちゃんと雰囲気を察して遠慮してる。翔一は、なーんにも気にしてないわ」
すると恵真の隣にいたこずえも口を開いた。
「うちなんてもっと酷いわよ。パパの方が美羽ー! って両手広げて待ち構えてるんだから。見てよ、あのデレデレ具合。鼻の下伸ばしちゃって、パイロットの威厳なんて欠片もないわね」
ため息混じりにそう言うこずえの視線の先では、伊沢が3歳の愛娘を抱いて目尻を下げている。
「ふふっ、伊沢くんメロメロだね。美羽ちゃん、可愛いもん。ピンクのフリフリのワンピース、よく似合ってる。あのお洋服って、伊沢くんが選んだの?」
「もちろん。私、あんな趣味じゃないもん」
確かに、と恵真は苦笑いした。
双子の小学校入学を翌月に控えた3月最初の日曜日。
日本ウイング航空のハンガーでは、ファミリーデーが催されていた。
社員が日頃の感謝を込めて家族を招き、職場見学や航空業界の裏側に触れてもらう日だ。
野中と大和と伊沢は、パイロットとしてゲストをおもてなしすることになっており、恵真は彩乃やこずえと一緒に子どもたちを連れてハンガーに遊びに来ていた。
ずらりと並んだ飛行機をバックに、子どもたちがパイロットに質問したり、一緒に記念撮影をしている。
笑顔でそれに応じていた大和からゲストが離れて行くと、大和はこちらを振り返り、屈んで大きく手を広げた。
「翼、舞、おいで」
二人はパッと笑顔で駆け出し、大和の腕の中へ飛び込んで行く。
「おっと! さすがは6歳だ。すごいパワーだな」
なんとか足を踏みしめて耐えると、大和は二人を抱きしめる。
「よかったー、おとうさんだ」
「ん? どういう意味だ、舞」
「ほかのおともだちに、おとうさんをとられちゃったらどうしようって、しんぱいだったの」
「お父さんが? 心配いらない。お父さんはずーっと舞と翼のお父さんだよ」
うん!と笑顔になる舞の頭をなでると、大和は二人と手を繋いで立ち上がった。
「翼も舞も、飛行機の中を見に行くか?」
「えっ、いいの?」
「ああ。今日は特別な日だからな」
「やったー!」
ピョンピョン飛び跳ねて喜ぶ二人に目を細めると、大和は顔を上げる。
「恵真」
優しく名前を呼ぶ声は、ずっと以前から変わらない。
「行こう」
愛おしそうに見つめる瞳も。
「はい」
恵真も変わらぬ笑顔で大和を見つめ返した。
翼が声を上げ、舞も振り返る。
「ほんとだ、おとうさん!」
笑顔で駆け寄ろうとした二人は、大和が他の子どもたちと話しているのを見ると、足を止めた。
パイロットの制服に身を包んだ大和が、子どもたちに囲まれて写真を撮っている。
どうやら翼も舞も、声をかけていいのかどうかためらっている様子だった。
「えらいわね、翼くんも舞ちゃんも。翔一なんて、見て。一目散にお父さんに飛びついちゃった」
呆れたような口調の彩乃に、恵真は微笑む。
「翔一くん、お父さんが大好きですものね」
「翼くんと舞ちゃんもそうでしょ? だけどちゃんと雰囲気を察して遠慮してる。翔一は、なーんにも気にしてないわ」
すると恵真の隣にいたこずえも口を開いた。
「うちなんてもっと酷いわよ。パパの方が美羽ー! って両手広げて待ち構えてるんだから。見てよ、あのデレデレ具合。鼻の下伸ばしちゃって、パイロットの威厳なんて欠片もないわね」
ため息混じりにそう言うこずえの視線の先では、伊沢が3歳の愛娘を抱いて目尻を下げている。
「ふふっ、伊沢くんメロメロだね。美羽ちゃん、可愛いもん。ピンクのフリフリのワンピース、よく似合ってる。あのお洋服って、伊沢くんが選んだの?」
「もちろん。私、あんな趣味じゃないもん」
確かに、と恵真は苦笑いした。
双子の小学校入学を翌月に控えた3月最初の日曜日。
日本ウイング航空のハンガーでは、ファミリーデーが催されていた。
社員が日頃の感謝を込めて家族を招き、職場見学や航空業界の裏側に触れてもらう日だ。
野中と大和と伊沢は、パイロットとしてゲストをおもてなしすることになっており、恵真は彩乃やこずえと一緒に子どもたちを連れてハンガーに遊びに来ていた。
ずらりと並んだ飛行機をバックに、子どもたちがパイロットに質問したり、一緒に記念撮影をしている。
笑顔でそれに応じていた大和からゲストが離れて行くと、大和はこちらを振り返り、屈んで大きく手を広げた。
「翼、舞、おいで」
二人はパッと笑顔で駆け出し、大和の腕の中へ飛び込んで行く。
「おっと! さすがは6歳だ。すごいパワーだな」
なんとか足を踏みしめて耐えると、大和は二人を抱きしめる。
「よかったー、おとうさんだ」
「ん? どういう意味だ、舞」
「ほかのおともだちに、おとうさんをとられちゃったらどうしようって、しんぱいだったの」
「お父さんが? 心配いらない。お父さんはずーっと舞と翼のお父さんだよ」
うん!と笑顔になる舞の頭をなでると、大和は二人と手を繋いで立ち上がった。
「翼も舞も、飛行機の中を見に行くか?」
「えっ、いいの?」
「ああ。今日は特別な日だからな」
「やったー!」
ピョンピョン飛び跳ねて喜ぶ二人に目を細めると、大和は顔を上げる。
「恵真」
優しく名前を呼ぶ声は、ずっと以前から変わらない。
「行こう」
愛おしそうに見つめる瞳も。
「はい」
恵真も変わらぬ笑顔で大和を見つめ返した。