Good day ! 4【書籍化】
無事に離陸してから約4分後、高度は15,000フィートに達した。
恵真はブリードエアの表示を確認しながら、計器を眺める。

「Pack flow normal. PCAの時は冷えましたけど、エンジンブリードに切り替えてからは、機内の温度も安定しています」
「了解。念の為、落ち着いたらキャビンに聞いてみよう」
「はい」

恵真は飛行が安定してから、佐々木にインターホンで尋ねた。

「客室の温度、大丈夫そうですか?」
『はい、大丈夫です。離陸前は少し寒かったのですが、今は温かくなっています』
「ありがとうございます。なにかあればすぐに教えてくださいね」
『了解しました』

巡航に入り、シートベルトサインをオフにすると、恵真はようやく肩の力を抜いた。
すると同じように後ろから「ふう、やれやれ 」と聞こえてきて、慌てて振り向く。

「の、野中キャプテン!?」
「ん? なに、藤崎ちゃん。もしかして、俺達の存在忘れてた?」
「あ、はい。すっかり……」
「だってよ、佐倉。愛する奥さんに忘れられてたぞ」
「ちょ、野中さん!」

恵真は思わず顔を赤らめた。

「いえ。操縦に集中してこそパイロットですから」

キリッとした声で大和が答える。

「なるほど。直訳すると、ますます君に惚れ直したよってことか」
「あの、もう、野中キャプテン。ここはコックピットですから」
「はいはい。それに大事な伊沢のラインチェックだしな。ん? どうした、伊沢」

左側の伊沢を見ると、何やら落ち込んでいる。

「俺もすっかり忘れてました……。佐倉さん、俺、APUアウトでも全く動揺してませんよ? あはは!」
「なーにを今更。佐倉のやつ、熱心にカリカリ書き込みしてたぞ」
「ええー!?」

野中の言葉に、伊沢はますます肩を落とす。

「伊沢キャプテン、まだフライトは始まったばかりですから。ね?」
「うん、そうだよな」

恵真が励ましていると、またしても野中が茶々を入れた。

「ふむふむ。伊沢キャプテン、コーパイに励まされる……、と」
「もう、野中さん!」
「ごめんって。あまりに藤崎ちゃんが完璧だからさ」

その時、コックピットのドアがコンコンとノックされる。

「佐々木です。お飲み物をお持ちしました」
「今開けまーす」

野中が立ち上がってドアを開けた。

「失礼します。はい、佐倉キャプテンはブラック、野中キャプテンはお砂糖とミルクたっぷり。恵真さんはミルクオンリー。伊沢キャプテンは、CAみんなのパワーも注いでありますからね」
「ありがとうございます!」

にっこり笑う佐々木から、伊沢も嬉しそうにコーヒーを受け取った。

「なんだよー、みんな伊沢を甘やかし過ぎてないか?」
「あら、伊沢キャプテンの人徳ですよ。クルーみんなから愛されるキャラですもの」
「俺以外のみんなね」
「そんなこと言って。野中キャプテンが一番可愛がってるでしょ? ふふっ」

な、なにを……と面食らう野中をよそに、「それでは、このあともよろしくお願いします」と言って佐々木は出て行った。
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