Good day ! 4【書籍化】
「ではまず、ジャケットの方からアナウンスをやってみましょう。お辞儀をしたあと、マイクを持ってお客様にご案内します」

佐々木にならって舞が通路に立ち、両手を揃えてお辞儀をした。
右手でマイクを持つと、佐々木が差し出したひらがなで書かれたカードを読み上げる。

「みなさま、ほんじつはJWA 001びんをごりよういただき、ありがとうございます」

次にライフベストを実際に着て佐々木と一緒に使い方を説明すると、再びマイクを握った。

「まもなく りりくいたします。シートベルトを しっかりと おしめください」

恵真もこずえも、シートベルトをカチッと締める。
最後にもう一度丁寧にお辞儀をしてから、舞はギャレーに戻った。

「舞ちゃん、上手! 立派なCAさんね。それになんか、私たちも貴重な体験じゃない? いつもコックピットにいるからさ」

こずえに言われて、「確かにそうね」と恵真も笑う。
次いでエプロン姿の美羽が、佐々木と一緒にカートを押して現れた。

「わあ、美羽ちゃん素敵!」

恵真の言葉に、美羽は得意げに澄まして見せる。

「おのみものを おもちしました。コーヒーかりんごジュースはいかがですか?」

こずえは「えーっと」と考える素振りをする。

「じゃあ、コーヒーをお願いします」
「はい! りんごジュースです」
「なんでやねん!」

恵真は二人の様子を動画に撮りながら笑ってしまう。
が、ふと視線を上げると舞の様子が目についた。
後ろを振り返り、パイロットのお仕事体験をじっと見つめている。
ちょうど制服姿の翼が、大和に教わりながらコックピットで操縦体験をしているところだった。

「ナイスランディング!」

大和が笑顔でサムアップし、翼も嬉しそうに笑っている。

(舞、本当はパイロットをやりたかったのかな?)

そう思い、CAのお仕事体験が終わると、恵真は舞に聞いてみた。

「舞もパイロットやってみる?」

だが舞は、少しうつむいてまた首を振る。

「ううん、だいじょうぶ」
「そう……。じゃあ、お兄ちゃんとお父さんも一緒に写真撮ろうか?」
「うん」

はにかんだ笑みで頷く舞と手を繋いで、恵真は大和のもとへ行く。

「おっ、舞。似合うな、ジャケット。CAのお仕事、どうだった?」
「たのしかったよ」
「そうか。お父さんも見たかったな」

それを聞いて、こずえがスマートフォンを操作し、恵真に動画を送信した。

「舞ちゃんのCAさん、撮影してたんだ。おうちで見てみてね」
「ありがとう! 私も美羽ちゃんの動画送るね。伊沢くんにも見せてあげて」
「そうね。泣いて喜ぶわ、きっと」

その様子は容易に想像出来る。
最後にお互いの家族写真と、3家族の集合写真を撮り、楽しい1日を終えた。
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