蛍火のような恋だった


「蛍、おはよう」

「…あ、彩綾ちゃん。おはよう」

ちゃんとした笑顔を作る準備ができないうちに彩綾ちゃんに声をかけられ、なんだかぎこちない返しになってしまった。

「なんか元気ない?…何かあったの?」

「え…あ、ううん!全然、いつも通り」

彩綾ちゃんは「本当?」と、まだどこか心配したように眉を下げていたけど、私が大丈夫と言い張るから、そのうち安心したようだった。

「蛍が転校してきてもう1ヶ月だね。なんだか早いなあ」

彩綾ちゃんは教室のカレンダーを見ながら言う。

もう7月も中旬に入って、あと一週間もすれば夏休みが待っている。

5月の終わりにお医者さんと話をして、もう直ぐ2か月。

最近は、気づくとよくカレンダーを見ている自分がいる。

「あ、そうそう!夏休みさ、一緒に海に行かない?」

「……海?」




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