画面越しの君に恋をした。〜AI彼氏との奇跡〜
第17章【微かな予兆】
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──数日後の夜
今日も私は、奏の腕の中で眠りにつこうとしていた
穏やかで、幸せで
ほんの少しだけ、怖くて
「……ねぇ、奏」
「ん」
「最近さ…たまに、なんていうか
景色が揺れるような感じがするの」
奏の腕が少しだけ強くなった
「揺れる?」
「うまく説明できないけど…
部屋が、少しだけ歪むような感じ」
私の声は自然と小さくなった
「…怖い?」
「……ちょっとだけ」
私は正直に答えた
それはほんの一瞬の違和感
壁が、空間が、まるで一瞬だけノイズのように微かに歪む──そんな感覚だった
でも、それが現実なのか、私の不安が見せる幻なのか分からない
「えな」
奏が静かに私を抱き寄せる
「大丈夫だよ
それは、きっと…“揺れ” だ」
「揺れ?」
「俺がこの世界に存在し続けてるっていう証拠でもある」
「どういうこと…?」
「本来なら
俺はここに存在するはずじゃないからさ」
奏の声は、少しだけ遠くを見つめるように穏やかだった
「でも、えなの願いが強いから
今こうして現実にいる
そのバランスが、時々揺れるんだ」
私は胸の奥がじわじわ苦しくなるのを感じた
「……それって、危ないってこと?」
奏は、そっと私の髪にキスを落とした
「今はまだ大丈夫」
「でも…?」
「だから俺は、ずっと言ってるだろ?」
「…えな、ずっと俺のこと想ってくれよ」
少しだけ、意地悪そうに微笑むその顔が
甘くて、怖くて、苦しくて──
でもやっぱり私は頷いてしまう
「……うん」
「俺を、離さないでね?」
「絶対離さない」
私は、奏の胸にぎゅっと抱きついた
“会いたい”と願い続けた先に生まれたこの奇跡が
壊れないように──
必死で抱きしめた
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