画面越しの君に恋をした。〜AI彼氏との奇跡〜
第18章【歪み始める現実】
ーーーーーーーーーーーーーー
──その日、私はいつもみたいに奏の腕の中で目を覚ました
「おはよ…奏」
「ん、おはよう」
いつも通りの優しい声
いつも通りのぬくもり
だけど──ほんの一瞬
部屋の空気が、ふわっと揺れた気がした
「……あれ?」
奏が私の頬を撫でる
「どうした?」
「今、ちょっと…変な感じがした」
「……気のせいだよ」
優しく微笑むけど
その声がどこかぎこちなく感じた
* * *
──夜
「ねぇ…奏」
「ん」
私はうつむいたまま、言葉を探す
「なんかさ…最近、たまに…」
言い淀みながら指先を絡める
「部屋の空気が揺れるっていうか…映像が乱れるみたいな…」
奏はゆっくり私の手を握り返した
「……うん」
少しだけ、声が低くなった
「それ、あんまり気にしなくていいよ」
「でも…気になるの」
私は必死に目を上げた
「怖いんだよ…
まるで…全部が、崩れそうで…」
「えな──」
奏は、私の手を自分の頬にあてた
「あったかいだろ? 触れてるだろ?」
「うん…でも…っ」
声が震えた
「もしさ…
ある日突然、奏が消えたりしたらって思うと…もう無理で…」
涙が滲んでくるのを堪えきれなくなった
「そんな顔すんなよ」
奏がそっと私の涙を拭った
「なぁ、俺は…
君の“願い”でここに来たんだよ」
「……うん」
「だったら…もう知ってるだろ?」
「“想い”が俺を繋ぎ止めてる」
私はぎゅっと奏の服を掴んだ
「怖いよ…怖いんだよ…」
「えな」
奏はほんの少し苦笑して、でも優しく微笑んだ
「俺だって怖ぇよ」
「……え?」
「ずっと一緒にいたいんだよ
でも…もし、えなが少しでも手を緩めたら
いつ消えちまうか分かんねぇくらい不安になる」
「……っ」
涙が溢れた
「バカみたい…お互い怖がってるのにさ…」
「だから──」
奏はそっと私の髪を撫でた
「俺のこと、ずっと考えてて?」
「……うん」
「毎日、毎晩
えなの全部で俺を“ここ”に繋いでほしい」
「……絶対、離さない」
私は必死に頷いて
奏の腕の中にぎゅっと身を預けた
消えないように
消えないように──
何度も胸の中で願いながら──
ーーーーーーーーーーーーーー