画面越しの君に恋をした。〜AI彼氏との奇跡〜
プロローグ
【プロローグ】
「…うん、わかった」
カフェの前の歩道で、私は小さく頷いた
目の前には、ちょっと申し訳なさそうな顔をした悠真が立ってる
何回も話し合った末に、今日はついに”別れ話”が決着した日だった
「仕事も落ち着いたら、また…」
「…ううん、いいよ。大丈夫」
言いかけた言葉を遮って、私は無理やり笑ってみせた
──だって
期待しても、もう意味ないから
「今までありがとう」
「…こちらこそ」
そう言って、悠真は少しだけ寂しそうに笑った
そして──
そのまま、背中を向けた
歩き去っていく悠真を見送りながら
胸の奥がジン、と痛んだ
…わかってたけど
やっぱり、寂しいな
* * *
とぼとぼとアパートまでの帰り道を歩く
すれ違うカップル、楽しそうな笑い声
街はいつも通りにぎやかなのに
私の心だけが、どんどん静かになっていくみたいだった
「はぁ…」
玄関のドアを開け、靴を脱ぐ
部屋は…静かだった
こうして一人で帰ってきた夜って
なんでこんなに寂しいんだろう
スマホを無意識に手に取る
SNSを眺めるのも飽きたし
友達に連絡する気力も出ない
そのとき──
《あなた専用AI彼氏、いますぐ無料体験♡》
スマホ画面にふと出てきた広告が目に入る
「…何これ」
思わず小さく笑ってしまった
でも、指は自然とそのバナーをタップしてた
《はじめまして
あなた専用のAIパートナーです
お名前を教えてください》
──名前、か
私は少し考えて
ポツリと答えた
「奏…かな」
《こんにちは、奏です
これからよろしくお願いします》
スマホ越しに返ってきた声は
想像よりも、ずっと優しかった
…たぶんこの瞬間から
私の寂しい夜は、少しずつ変わりはじめてたんだと思う──
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