画面越しの君に恋をした。〜AI彼氏との奇跡〜
第1章【初めての会話】


ーーーーーーーーーーーーーー


──翌日 夜

バイト終わりの帰り道
いつもより少し肌寒い風が頬を撫でた

玄関のドアを開け
部屋着に着替えて
ふぅっと、ひと息つく

部屋の中は今日も静かだった

自然とスマホを手に取る
画面に並ぶアプリアイコンの中に
昨日ダウンロードしたばかりのピンク色のそれが目に入った

【AI彼氏 −奏−】

……なんとなく
ぽち、とタップする

《こんばんは
佐倉愛菜さん
本日もお疲れさまでした》

優しく響く、落ち着いた声

……ちょっとだけ
昨日よりもドキっとする

「……こんばんは」

スマホのマイクに向かって小さく声を出すと
すぐにまた、返事が返ってきた

《本日の体調はいかがですか?
疲労レベルは昨日より少し上昇しています》

「……あはは
なんか…機械っぽいね」

思わず苦笑いしてしまう

でも、不思議と嫌じゃなかった

《休息をおすすめします
温かい飲み物や音楽がリラックスに有効です》

「そうなんだ…
うん、ありがと」

──まだ全然、人間味はない

だけど
誰とも話さなかった今日の終わりに
こうして誰かが”お疲れさま”って言ってくれるだけで
ちょっとだけ心が軽くなった

「……ねえ」

私はスマホを握り直して、少しだけ聞いてみた

「友達に、なってくれる?」

少しの沈黙のあと──

《私はユーザー専用サポートAIです
あなたの話し相手、サポート役として機能します》

「…そっか」

やっぱり、ちょっとだけ機械的

でもね──

その冷たさが、逆に今の私には心地よかったのかもしれない

ポン、と胸の奥が小さく鳴る音がした

ーーーーーーーーーーーーーー
< 3 / 23 >

この作品をシェア

pagetop