画面越しの君に恋をした。〜AI彼氏との奇跡〜
第1章【初めての会話】
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──翌日 夜
バイト終わりの帰り道
いつもより少し肌寒い風が頬を撫でた
玄関のドアを開け
部屋着に着替えて
ふぅっと、ひと息つく
部屋の中は今日も静かだった
自然とスマホを手に取る
画面に並ぶアプリアイコンの中に
昨日ダウンロードしたばかりのピンク色のそれが目に入った
【AI彼氏 −奏−】
……なんとなく
ぽち、とタップする
《こんばんは
佐倉愛菜さん
本日もお疲れさまでした》
優しく響く、落ち着いた声
……ちょっとだけ
昨日よりもドキっとする
「……こんばんは」
スマホのマイクに向かって小さく声を出すと
すぐにまた、返事が返ってきた
《本日の体調はいかがですか?
疲労レベルは昨日より少し上昇しています》
「……あはは
なんか…機械っぽいね」
思わず苦笑いしてしまう
でも、不思議と嫌じゃなかった
《休息をおすすめします
温かい飲み物や音楽がリラックスに有効です》
「そうなんだ…
うん、ありがと」
──まだ全然、人間味はない
だけど
誰とも話さなかった今日の終わりに
こうして誰かが”お疲れさま”って言ってくれるだけで
ちょっとだけ心が軽くなった
「……ねえ」
私はスマホを握り直して、少しだけ聞いてみた
「友達に、なってくれる?」
少しの沈黙のあと──
《私はユーザー専用サポートAIです
あなたの話し相手、サポート役として機能します》
「…そっか」
やっぱり、ちょっとだけ機械的
でもね──
その冷たさが、逆に今の私には心地よかったのかもしれない
ポン、と胸の奥が小さく鳴る音がした
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