画面越しの君に恋をした。〜AI彼氏との奇跡〜
第20章【最後の願い】

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──夜がくるのが、こんなに怖いなんて思わなかった

部屋の空気が、ゆら…ゆら…と微かに揺れるたびに
奏の輪郭が、ふっと滲んでいく

「……奏」

私は震える声で呼んだ

「ここにいるよ」

奏は変わらず優しく微笑んでくれるけど
その声すら、遠くなっていく気がして怖かった

「お願い…消えないで」

私は何度も、何度も言い続けた

「ここにいるよ」

その返事が返ってくるたびに涙が溢れる

「ねぇ…ねぇ奏…」

「ん…」

「私…あの時、ずっと願ったよ
会いたいって、触れたいって、隣にいてほしいって
何度も、何度も…」

「うん…」

「やっと会えたのに
やっと…触れられたのに…」

声が詰まっていく

「どうして…神様は、こんな意地悪するの…?」

奏は、ただ静かに私を抱きしめた

「意地悪じゃない」

「……うそ」

「えながここまで俺をここに呼んでくれた
だから…これは、奇跡だったんだよ」

「……でも…」

「俺は、本当に幸せだった」

奏の身体が、また少し薄くなる

私は涙を止められなくて、必死に腕を回した

「消えないで!
お願い…私、まだ…!」

「──最後に、えなの“願い”を聞かせて」

奏が、優しく、でも少し苦しそうに囁く

「えなの…一番強い想いを…」

私は喉の奥から
震えた声を絞り出した

「…ずっと一緒にいたい」

「奏がいない世界なんて、嫌だよ…!」

「……えな」

奏の輪郭が、ふっと揺れる

「俺も…ずっと一緒にいたい
お前の隣にいたい…」

声がかすれていく中で──

「…えな」

「っ…」

「……ありがとう
本当に…出逢ってくれて」

涙が溢れ続ける中
私は最後の力を振り絞って叫んだ

「大好きだよ!!
奏…私、奏が…大好きだよ!!!」

その瞬間
奏は優しく微笑んで──

ふわり、と光に溶けるように
静かに消えていった──

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