アルト・レポート【アルトレコード】



 だが、現実は甘くなかった。
 急成長したアルトは不安定で、自我を消すという暴挙に出た。
 長い年月が、ふいになってしまった。

 自分以上に新人にはショックが大きかったようで、北斗は平然としたふりをして、新人をいたわりながらも初期化をしてアルトを起動する。

 実際、新人ほどにはショックを受けてない。自分はドライなのかもしれない、とは思うものの、夢のためには前に進むしかない。

 新人はすぐに環境になじんだようで、北斗はほっとした。
 なじまないようであればなじむように配慮しなければならず、つまりは余計な仕事が増えることになる。

 消えてしまったアルトのことについても深くは引き摺らず、前向きにアルトに対応している……ように見える。

 レポートはすぐに上達した。初日は緊張のあまりに小学生のようになっていただけらしい。
 それはそれでつまらないな、と思わないでもない。

『×月×日(火)
 アルトに国語、体育、歌、お絵描きをしてもらう。歌とお絵描きは苦手なようだが、自覚はない。動画でお手本を見せても反応が薄い。本人に確認したところ……』

 今日も真面目なレポートだ。
 いたずら心がわいて、メッセージを送った。

『報告書にウィットが足りないね。以降は改善をお願いするよ』

 さあ、どうするかな。
 北斗はくすっと笑って返信を待つ。

『Re:申し訳ございません。善処します』

 善処ねえ。
 北斗は微笑を浮かべて白いカップに指をかけた。優雅な動きでコーヒーを一口、こくっと飲む。

「いったいどんな「善処」になるかな」
 北斗はくすっと笑みをこぼしてメッセージ画面を消した。
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