犬猿の仲でも溺愛が止まりません!


佐原と出会ったのは、まさに会議室①だった。

新人研修が開かれ、
夏希と佐原は何人かの同期とともに
6人グループに分けられた。


会社は大阪が本社だが、
東北にも支社があり、
中間地点として東京が選ばれることが多く、
新人研修は大阪、東北、東京と一括で、
東京で行われた。

課題を出され、それに対して発表し、
ディベートを各班と行うという基本的なものだったが、
その時も夏希と佐原は互いに意見を出し合い、
程よいバランスで場を盛り上げていた。

一月あった研修で、
同期たちは皆、仲良くなった。





今では当たり前に受け入れているが、
佐原は出会った当時、標準語だった。

「佐原涼司です。研修で色々学びたいと思っています。
たくさん勉強させてください!
よろしくお願いします」

そして、ニコリと笑った時、
ぱぁっと部屋が明るくなったように華があった。

佐原は今と変わらず、女子に人気ではあったが、
標準語で話している時は少しよそよそしく感じた。

しかし、
休み時間になると関西弁を発揮し、
親しみやすく会話の中心に躍り出た。

「親父が大阪で、おかんが東京やねん。
標準語の方がキリッとしててかっこええやろ!」

初めてノリノリの関西弁を聞いた時、
繊細な顔の印象とあまりにも違ってびっくりした。
てっきり東京生まれなのかと思っていた。


「自分プロデュースするのも上手なんだね」
と、ちょっと嫌味を言った夏希を、
「そやで!第一印象ってのは大事やからな!
へへっ」

にかっと笑った顔が人懐っこく、
夏希は面白いやつだなと思った。

今でも初めての会社にアポを取る時は
標準語らしい。
たまに電話しているのを見るとそれはそれで驚く。

佐原は男子とも仲良く、
同期の気の合う仲間で週末は飲みに行った。



夏希は野球部で鍛えた根性で、
佐原は持ち前のコミュ力おばけと知識で、
お互い違う良さがあり、
互いにこいつやるな……と次第に認め合っていった。



佐原の勤務地は大阪本社かと思っていたが、
研修が終わっても東京に残り、
東京で働くことになっていた。

会社は転勤ありなので、
もちろん夏希も大阪本社に行く可能性もあった。

しかし、初めての仕事や一人暮らしは不安もあったので、
東京で働くと決まって夏希は内心ホッとした。

夏希は、佐原が東京で同じ営業と知り、
なんか楽しく働けそう!と
ワクワクしたのを覚えている。


< 10 / 45 >

この作品をシェア

pagetop