犬猿の仲でも溺愛が止まりません!
6 猛追!
電話を切り、
ぐったりしながら、トボトボ歩いていると、
もうすぐ夏希のマンションだ。
………ん!?
マンションの前に見たことのある男性が……。
「うげっ!」
夏希は思わず声を出してしまった。
「なんやねん!
ゴキブリでも見たようなつぶれた声出して!」
今週はずっと逃げ回っていたので、
久しぶりの佐原だ。
「な、なんで家の前に突っ立ってんの!?
す、ストーカー!?」
と、夏希が言うと、
佐原が急に距離を詰めて来た。
「……チッ。こうでもせんと、
逃げ回って何も話してくれんやん」
ロビーの壁に追い詰められ、
夏希は、正面から佐原の顔を見た。
「……なぁ。
ほんまに何もなかったことにしてええん?
……俺はできへんよ」
栗色の綺麗な瞳が、
絶対夏希を逃さない
と言うように見つめて囚えている。
あの夜、何度もこの瞳が狼のように輝くのを見た。
夏希は何も言えず、
佐原を見つめている。