犬猿の仲でも溺愛が止まりません!
佐原のことは……嫌いではない。
それだけは分かっている。
でも、だから付き合うかと言うと、
夏希のキャパでは考えられない。
いい年にもなって、初めての恋愛沙汰なのだ。
しかも、身体からという失敗……。
「好きって何!?
付き合うって何するの!?
あーーー!!!」
ジタバタする夏希の頭を今度は彩香が撫でながら、
「えー、モンチ本当に初めてなんだねぇ。
かわゆ〜!」
とおちょくる。
「……だって、分かんないんだもん」
今まで男には負けたくない、
東京で一番取りたいと営業の仕事を頑張ってきた。
だから、同期(佐原含めて)も女の子扱いなんてしない。
椅子も机も自分が持って運ぶし、
辛い外回りも気合で夏だろうが冬だろうが出かけてた。
大学時代は野球ばかりで、
まるで少年のように泥だらけになっていた。
「モンチぃ〜、
……きっと猛烈にギュッとしたくなる時があるよぉ」
「ゲ!!ど、どういうこと?」
「胸がキュンとしてぇ、もっと一緒にいたいなぁって♡」
「むむむ……」
「なんかキラキラしてぇ〜おかしいなぁと思うんだけど、独りだけ他の人とは違うのぉ」
彩香は遠くを見て、うっとりしている。
「はぁ……」
そんなことあるのだろうか。
仕事をし始めてからは仕事を覚えて、
とにかく営業成績を残すことに精一杯。
周りの女子たちが誰々がカッコいい!素敵!
と話していてもあまり気にしていなかった。
「彩香は、二階堂さんとはどうなの?」
「あ、樹さん?
ふふふ。良い感じ〜!
今度二人で飲みに行こうねってメールしてる♡」
彩香は、相変わらずときめきが多い。
前に話していた合コンで会った人はどうなったのか……
聞きたい気持ちをグッと抑える夏希だった。