犬猿の仲でも溺愛が止まりません!

「おーい」



「おーーい、夏希ちゃん」


「俺が悪かったわ〜許してぇな〜」



パーク内を夏希がズカズカ歩く。その後ろを佐原がちょこちょこ追いかけている。


「……ほんとに心配してたのにさっ」


「めちゃ感謝してるで〜」


「なのに!なんかやらしいことしてさ!!」


「だから、謝っとるやないか」


「って、彩香と樹さんは!?」


「……知らーん」

二人がぎゃあぎゃあしているのを横目に、こりゃ付き合ってられないと彩香と樹は別行動をしていた。
佐原にはこっそりとメールが届いていた。

『なかなか手強そうだけど、がんばれー』

(……このひらがなの応援、こりゃあかんな〜って感じするわ)
と、樹からのメッセージを佐原そう受け取ったが、むしろこれで負けてられんともう一歩前進しようと熱い闘志を燃やしていた。


でも、今、怒った夏希に置いていかれようとしている……。




「あ!」

夏希が目的地に着いたらしく小さく声を出した。

「ここ?なんなん?」
「スペースホラー……っていう、新しくできたお化け屋敷」
「へぇ~」

見てみると、大きな宇宙船が座礁したように岩にぶつかって止まっているアトラクションだ。

どうやら、宇宙船の入り口がアトラクションの入り口のようで、人がたくさん並んでいる。

「ちょっと怖いみたいだけど、スペースモンスターって映画のお化け屋敷なんだって!」
「おぉ!あれか!3Dでめちゃおもろかったな!」
「佐原も観たの!?」
「観たで〜ほんまに宇宙で戦うとる感じがしてビビったわ」
「サングラスして入るのも面白かったよねぇ〜」


と、ノリノリで二人はお化け屋敷に並んだ。








「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」


入った途端現れる宇宙のモンスター達。
この叫んでいるのは……夏希である。


「あかんて!そっちやのうて!」
「イャァァァァァ!!」
「そこは出口やないわ!」
「ふえぇぇぇぇ……」

夏希は散々走り回り、謎の道にそれた挙句、座り込んだまま動かなくなってしまった。

「えっぐえっぐ………」
「もー、大丈夫やで。一緒に出口に向かおな。目も開けんでええから」

(佐原の手あったかい……)
その優しさに、恐怖におののいた夏希はまた涙した。


佐原は赤ちゃんのようにグズる夏希の手を引き、スペースモンスターが迫るたび怯える夏希を抱きしめ、出口まで進んでくれた。

「……ざばら……ごめ……エグっ」

「もう少しやで〜大丈夫や。苦手なもんあるのはしゃあないやろ。お、出口やな!」

宇宙船の扉がウィィィィンと音を立てて開かれる。

ヨロヨロしている夏希の手を引き、扉を出ようとすると、

プシーーーーッ!!

と白い煙が噴出した。

「きゃぁぁぁぁ!」
「うわっ!」

最後は子供だましの演出だったが、疲弊した夏希には効いた。

出口を出たは出たが、夏希はちょこんと座り、動けない。


「伊藤?大丈夫か?」

「……こ、腰抜けた。ウグッ……」

外に出て安心したのか、にへらと笑ったものの涙目である。

「しゃあないなー!俺が姫さんを抱っこしたるわ」
「えっ!」

夏希が慌てる間もなく、佐原がグッと抱き上げてくれた。

周りの客も「ヒュー!」と口笛を鳴らす人もいれば、若い女の子は「良いなぁーイケメンにお姫様抱っこしてもらえるのぉ」と羨ましそうに見ている。
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