犬猿の仲でも溺愛が止まりません!
佐原の秘密
次の日、会社に夏希が行くと社内はざわついていた。
佐原のことはあったが、夏希は?と言う感じで、
先に来ていた由香に聞いた。
「……皆どうしたの?」
「……なんか、社長が倒れたみたいなんです」
と、真剣な表情で由香が言う。
「え……」
どこかで聞いた話だ。
「緊急手術したみたいで、社長が中心になってた大きなプロジェクトが色々な部署に降りてきてて、上の人がバタバタしてます」
「緊急手術……」
それも聞いたことがあるワードだ。
夏希は、佐原の分まで東京で頑張ろうと気合いをいれて
会社に来たが、
どうやら社内は混乱しているようだ。
「ええ!!」
女の子たちの黄色い叫び声が聞こえた。
「……何?」
夏希が不穏な空気を感じて、そちらを向く。
皆、顔を驚かせたり、赤らめたりしている。
「なんでしょう……先輩、私も探ってみます」
と、由香が軽やかに女子たちの噂話に入って行った。
夏希がチラチラ見ていると、
女の子の中でもキラキラしているギャルから由香は耳打ちされていた。
「え!嘘!」
と、由香が驚いていた。
うーん、と頭を抱えて由香は帰ってきた。
「由香ちゃん、どうしたの?」
「……どうやら、社長が倒れて色々分かったことがあったみたいですね」
「何が」
夏希はなんとなく嫌な予感がした。
「どうやら、佐原さんって、社長令息だったみたいなんです」
夏希は昨日まで一緒にいた佐原が、本当の姿ではなかったと知った。
「で、でも、名字違うよね……」
震える声で由香に問いかける。
「なんか武者修行にだされてたみたいで、本当の名前は桜井涼司、と言うようです」
「……え」
「佐原さんの仕事も皆に振って、しばらくは大阪勤務……もしくは本社の大阪に戻るかもしれないって」
佐原は佐原ではなかった。
桜井商事の御曹司……。
今まで一緒に戦ってきた佐原は……なんだったんだろう。
嘘の中で、佐原を……好きになってしまった。
夏希は混乱し、大きなショックを受けた。
「なんだよー、じゃあ、佐原ってコネで仕事取ってたの?」
と、心無い男性社員たちの声も聞こえる。
まさか、とは思うが、
異様に大企業と繋がって沢山仕事を取ってきていた。
「せ、先輩……」
固まってしまった夏希を由香は心配し、声をかける。
「……そんな」
その日は何がなんだか分からないまま1日が過ぎた。