犬猿の仲でも溺愛が止まりません!
『脳卒中やってん……ゴルフ中に倒れて、そのまままだ目覚めん……』
「!」
『めちゃくちゃ早い対応してくれてな、なんとか命は繋いだんやけど、脳のダメージが大きくて、このままかもしれん……』
「……そうだったの……」
『オカンは明るい親父が大好きでな。おしどり夫婦やってん。今回のことでオカンも倒れてもうて……』
「お母様も!?」
『……心労でな。姉貴もおるんやけど、俺も何もできんと……。明るい親父がおらんと家が落ち込んでもうて……』
「そうだったの……」
『親父はバリバリの仕事人間やから、沢山案件も持っとったみたいで。えらい会社の人には負担かけとるみたいで……』
「バタバタしてるけど、大丈夫だよ!」
佐原の落ち込んだ声が、夏希の胸を締め付ける。
『本当にだますつもりやなかってん。堂々と名乗れるようになったら……って思うて。親父ともけんかしたままやったし、いつか認めてもらえるように頑張っとった。……でも、親父に認めてもらうんはもうできんかもしれん……』
「……あ、諦めちゃだめだよ!!」
夏希は思わず叫んでいた。
『……伊藤……』
「お父様も頑張ってると思う!私には分からないけど……目覚めなくても耳聞こえてるって言うし、諦めちゃだめだよ!」
『……ふふ。伊藤の、無駄に前向きな脳筋なとこ好きやで……』
「!……バカにしてる!?」
照れながら夏希は怒った。
『ははっ、ほんまに。いつもケツ叩かれて、勇気出るわ』
ちょっとムカッとしたが、佐原の力無い笑いが、夏希の怒りをおさめた。
『あー。久しぶりに笑ったわ。伊藤ありがとう。……正直な、結構ツライわ……』
ボソッと佐原が吐露(とろ)した。
その瞬間、夏希は言いようのない胸の痛みを感じた。
(抱きしめたい……)
自分でも分からないが、佐原を抱きしめたくてたまらなくなった。
「モンチぃ〜、
……きっと猛烈にギュッとしたくなる時があるよぉ」
という、彩香の声が聞こえた。