犬猿の仲でも溺愛が止まりません!
3 一夜明けて……猛省
そして現在……
夏希も、佐原も夜のことは忘れていなかった。
ところどころは曖昧だが……。
夏希は慌てながら、
ベッド下に落ちている自分の服を拾い、着た。
「え~と、伊藤。昨日のことやけどな……。」
ポリポリと顔を掻きながら、
佐原が照れたように何か話そうとしている。
『かわええ……』
そう言って何度もキスされたことを
夏希は思い出して、
真っ赤になりながら大きな声で叫んだ。
「ぎゃあああ!!」
「わっ、伊藤叫ぶなや!」
夏希は、もう混乱状態だ。
「ごっ、ごめんなさい!!
昨日はお疲れさまでした!!!
わ、私帰るね!!」
「……お、おい!」
そこからは一瞬だった。
お辞儀をしたままダッシュし、
夏希はなんとか発見したカバンを手に、
佐原の家を後にした。
1LDKの自分の家に帰ってきた。
ノロノロとロフトに上がり、
ベッドに倒れこんだ。
(や、やってしまった~~~~~~!!!!)
絶対に負けたくなかった佐原にめちゃくちゃ甘え、
初めてを捧げてしまった。
酒の力はすごい。
……自分にあんな一面があったなんて
夏希は信じられなかった。
家に帰って反省すること一時間。
夏希はメッセージが彩香から沢山来ていることに気づいた。
ノロノロと携帯電話を開き、
メッセージを見る。
『大丈夫?』
と、可愛い心配しているスタンプが何個も。
『とりあえず生きてる』
とメッセージを送る。
続いて、グダッとなった犬のスタンプ。
すると、既読になるやいなや彩香から着信が。
『モンチ~!!!』
耳に痛い黄色い声。
まだ酒の影響が残っているのか頭がキーンと痛んだ。
『だ、大丈夫だったぁ??なんか面白いことになってたから、
置いて帰っちゃった。
……メンゴ!!』
心配しているのか、からかっているのか……
まあ、両方かなと夏希はぼんやり思う。
「……いやあ……失敗しちゃった……」
元気のない声で言うと、
『モンチ!ま、まさか……』
「……彩香の想像通りよ」
すると、
『きゃあああああああ!!!』
と大きな声が。
「なっ!何なのよ!」
夏希はぼんやりした頭に
彩香の叫び声が響き、
ハッと思考が正常に戻った。
『え、付き合うってこと?
やだ~、モンチの初の彼じゃん~!
ときめきしかない~!』
と、彩香は一気にお花畑だ。
「……いや、全然」
夏希はバシッと断った。
『なんでえぇ~!やることやっちゃったんでしょ?』
「うぐぅ!!
……なんか言おうとしてたけど、走って逃げてきた……」
そう言うと、
『えええー!!なああんで、健脚そこで発揮しちゃうのよ~~!!』
と残念そうな声で叫んでいた。
彩香と話しているうちに冷静になってきた夏希は、
「あいつと付き合うなんて、絶対にない!
佐原は私のライバルなんだから!」
と言ってこぶしを振り上げた。
『え~ちゃんと話しなよお~』
あーだこーだいう彩香をなだめ、
夏希は電話を切った。
あー月曜日が来るのが憂鬱だ。