双つの恋、選んだのは君だった
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翌週の放課後

サークルの帰り道
今日も樹先輩が駅まで送ってくれることになった

「最近、響がよくからかってくるみたいだね」

樹先輩がふわっと笑いながら言う

「……えっと…まぁ、少しだけ…」

「困ったやつだよほんと」

苦笑する先輩の横顔が、やっぱり優しくて胸が鳴る

「でも――」

ふいに、樹先輩の声が少しだけ柔らかくなった

「紬ちゃんが困ってるなら
無理しないで俺に言ってきてね?」

「……そんな、大丈夫です」

わたしは慌てて答えたけど
心臓はドキドキしてた

「いや、俺はさ」

一瞬だけ目が合う

「紬ちゃんが、嫌な気持ちになるのは…嫌だから」

ドクン――

静かに胸が跳ねた

「……先輩…」

「……ごめん、変なこと言ったかな」

「い、いえ…!嬉しいです…」

風がそっと吹き抜けた

いつも優しい先輩だけど
今日のその言葉は、少しだけ距離を縮めてきた気がした__

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