双つの恋、選んだのは君だった
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週末の帰り道
サークルが終わって
荷物を整理してたときだった
「今日もひとり?」
響が背後から声をかけてきた
「え、あ…先輩は用事で先に帰られたので…」
「じゃ、送ってってやる」
また、自然すぎる流れで隣に並んでくる
夜風が冷たくて
わたしは少しだけ肩をすくめた
「寒い?」
「……ちょっとだけ…」
響は無言で自分のパーカーを脱ぐと
そのままわたしの肩にかけてきた
「……!?」
ドクン、と胸が跳ねる
「これで少しはマシだろ」
「だ、大丈夫です…返します…」
「いいって。
どうせ兄貴ならこうすんだろ?」
響がわざとらしく微笑む
(……え…?)
「兄貴ってさ」
また、響がふっと話し始める
「ああ見えてけっこう鈍感なんだよな」
「……鈍感?」
「お前のこと、ほんとにどう思ってんだろなーってたまに思う」
言葉が詰まる
「そ、そんなこと…」
「お前さ」
ふいに響がわたしの方へ少しだけ距離を詰めた
「どっちといる方がドキドキしてる?」
ドクン――
その問いかけに答えられなかった
「……意地悪…です」
「違うよ。
俺は正直なだけ」
響のその低い声が
耳元でやけに響いた
(……ずるい……)
また静かに
わたしの心が揺れていた__
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