双つの恋、選んだのは君だった
第8章
はじまりの2人
――――
付き合い始めてから、少し経ったある日――
キャンパスの中庭で、わたしと響が並んでベンチに座っていた
「なあ」
響が不意に口を開く
「最近さ、調子乗ってね?」
「え? 何が?」
「俺の前でこんなに可愛い顔してるのお前だけだぞ」
「べ、別に可愛くしてない…!」
顔が一気に熱くなる
「ふーん」
わざとらしくニヤける響が意地悪に覗き込んでくる
「照れてる顔、わかりやすっ」
「もう…」
そっと背中を小突くと、響はそのままわたしの肩を引き寄せた
「なに逃げようとしてんだよ。俺の彼女だろ」
ドクン――
(ほんと、意地悪…)
でもその腕の中は、やっぱり落ち着く
「……そういうとこだぞ」
「何が」
「そういうとこが…好き」
「……ふっ」
耳元で低く笑う響に、またドキドキが止まらなかった
そこへ――
「あれ? ふたりとも仲良さそうだね」
ふわっと優しい声がして振り返ると
樹先輩が微笑みながら立っていた
「先輩…!」
「相変わらず響は独占欲強いなあ」
「……悪い?」
響はそっけなく言いながらも、先輩に軽く会釈した
先輩はふっと笑ったまま、わたしに向かって言う
「でも、ほんと良かったよ。紬ちゃんが笑ってるのが一番だから」
「先輩…ほんとに…ありがとうございます」
自然と頭が下がるわたしを、先輩はそっと手で止めた
「もういいって」
先輩の笑顔は、ほんの少しだけ切なさを残しつつも温かかった
「それに――」
「……ま、こうして残念賞になった俺も
たまには恋愛相談くらいは乗るからさ」
「え…?」
「え?」
響とわたしが揃って顔を見合わせると
先輩は肩をすくめて笑った
「冗談、冗談。幸せそうで何より」
そのまま先輩は軽く手を振って去っていった
「ほんと兄貴優しいやつだよな」
響がぽつりと呟く
「ほんとに…」
しみじみと答えたそのあと――
「でも、ま。俺の勝ちだけど?」
「なにそれ……やっぱり意地悪」
そんな響の横顔に、また胸が温かく跳ねた__
――――
付き合い始めてから、少し経ったある日――
キャンパスの中庭で、わたしと響が並んでベンチに座っていた
「なあ」
響が不意に口を開く
「最近さ、調子乗ってね?」
「え? 何が?」
「俺の前でこんなに可愛い顔してるのお前だけだぞ」
「べ、別に可愛くしてない…!」
顔が一気に熱くなる
「ふーん」
わざとらしくニヤける響が意地悪に覗き込んでくる
「照れてる顔、わかりやすっ」
「もう…」
そっと背中を小突くと、響はそのままわたしの肩を引き寄せた
「なに逃げようとしてんだよ。俺の彼女だろ」
ドクン――
(ほんと、意地悪…)
でもその腕の中は、やっぱり落ち着く
「……そういうとこだぞ」
「何が」
「そういうとこが…好き」
「……ふっ」
耳元で低く笑う響に、またドキドキが止まらなかった
そこへ――
「あれ? ふたりとも仲良さそうだね」
ふわっと優しい声がして振り返ると
樹先輩が微笑みながら立っていた
「先輩…!」
「相変わらず響は独占欲強いなあ」
「……悪い?」
響はそっけなく言いながらも、先輩に軽く会釈した
先輩はふっと笑ったまま、わたしに向かって言う
「でも、ほんと良かったよ。紬ちゃんが笑ってるのが一番だから」
「先輩…ほんとに…ありがとうございます」
自然と頭が下がるわたしを、先輩はそっと手で止めた
「もういいって」
先輩の笑顔は、ほんの少しだけ切なさを残しつつも温かかった
「それに――」
「……ま、こうして残念賞になった俺も
たまには恋愛相談くらいは乗るからさ」
「え…?」
「え?」
響とわたしが揃って顔を見合わせると
先輩は肩をすくめて笑った
「冗談、冗談。幸せそうで何より」
そのまま先輩は軽く手を振って去っていった
「ほんと兄貴優しいやつだよな」
響がぽつりと呟く
「ほんとに…」
しみじみと答えたそのあと――
「でも、ま。俺の勝ちだけど?」
「なにそれ……やっぱり意地悪」
そんな響の横顔に、また胸が温かく跳ねた__
――――