溺愛の業火
『松沢くんの恋』
放課後の教室。
委員長の仕事と言うよりも、先生から頼まれた雑用を黙々と片付けながら、ため息。
救いなのは、清水くんが生徒会の仕事で忙しくて、ここに居ない事だ。
「篠崎、まだ抵抗してるのか?」
作業の手を止めて目を上げると、松沢くんがニヤリ。
「ねぇ、清水くんからは、どんな風に報告を受けているの?」
彼の質問には答えず、自分の疑問をぶつけた。
「これと言って報告はないんだけどね。清水とは友達歴が長いから、機嫌とか態度とかで何となく?」
松沢くんは作業に戻って、私から視線を逸らした。
少しホッとする自分がいる。
「元はと言えば、松沢くんが……」
思わず言いそうになって、口を閉ざした。
誤魔化そうと次の書類に手を伸ばしたけれど、机の上には処理済みの山だけ。
逃げるのも疲れた。
松沢くんなら、逃げる必要もないかな。
「私の弱みって、何?」
ずっと自分で考えていたけど、答えは出なかった。
清水くんに尋ねたとしても、教えてはくれないだろうし。
項垂れて、ため息を吐き出しながら、机に額を乗せた。
「優しいところでしょ。あいつ、そこに付け込んでるよね。」
清水くんの黒い笑顔が目に浮かぶ。
「松沢くんの恋は上手くいかないの?」
話題を逸らしても、現実からは逃げられないのだけど。
自分だけがさらけ出すのは不公平な気がする。
「うん?ふふっ……俺は清水の友達だぜ。好きになった相手を、そう簡単には逃がしてやらないよ。」
松沢くんの表情が気になって顔を上げると、彼は窓の外を見ていた。
読み取れるのは、寂しさかな。