溺愛の業火

押して


「清水くん、これ先生から明日までにって言われたんだけど。」

私は幾つかクロスされて山になった書類を抱えながら、彼に話しかける。
すると全ての書類を受けとり、机に置いてため息。

「あの、放課後が忙しいなら私一人で……」

周りから彼に、生徒会長から次期推薦の話が来ていると聞いた。
忙しいと思っていたし、急な仕事は大変だろうと、遠慮して言ったのに。
彼は私に優しい苦笑を見せる。

「篠崎、前にも言ったけどさ。先生から呼ばれた時は必ず、俺に声をかけて欲しいんだ。」

あぁ、こんな優しさを示されると、誰でも彼を好きになってしまうに違いない。

「これは、職員室の前で捉まってしまったのよ。途中で、手伝うと言ってくれる男子もいたんだけどね。」

「はぁ……。」

それは何のため息ですか?
山の書類を指さして説明しているのに、私の力も抜けてしまいますけど。

「篠崎、当然だけど放課後は俺も残るよ。全クラスに書類を配ると聞いていたけど、レジュメか。どこからの指示なんだろうな。」

そう言いながら、午後からの授業で邪魔にならないように小分けし、教室後部の棚に並べて重しを置いて行く。
手際が良い。


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