溺愛の業火

悲しい目をするんだね。
思わず、私の心も揺らいでしまいそうになる。


「ねぇ、和叶さぁ。母性本能が強いのはいいんだけど、俺以外に優しくするのはどうなのかな?」

いつの間に、隣に立っていたのかな。
気配がなかったのから殺気に満ちて、私の笑顔が引きつってしまう。

「おやぁ?今日は、遅くなるんじゃなかったのかな。」

「女心は、秋の空だっけ?副会長と時間を過ごしたいからって、書記が帰れとうるさくてね。」

あれれ。あの準備室を開けなくて正解だったのかな。
つまり、そういう覚悟って。

急激に体温が上がって、顔が熱い。

「おい、篠崎。そのタイミングで、赤くなるな!」

「松沢、お前……いい加減にしろよ。俺に何されても文句は言わせない!」

結構、本気の清水くんに抵抗も必死な松沢くん。
これは止めないと、私が悪かったのだから。

「一颯くん、一緒に帰ろう!」

私の大きな声は無事に届いて、彼の笑顔を得た。

恋は純粋で、人を弱くも強くもする。
不安と幸せに振り回され、それでもこの想いが続く事を願い。
私の感情よりも、彼から受ける愛情に恋い焦がれていく。

彼の嬉しそうな笑顔につられ、火照る頬に触れたくて手を伸ばす。
自分から抱き寄せて。彼の嫉妬心に慈しみが芽生え、身を滅ぼすような想いに慣れていく。

底なしの愛情。




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