溺愛の業火

清水くんの事を好きなのは知られたくない。
安易に付き合えるとは思えないから。

彼の好意に幸せと不安を味わう。
断っても彼が諦めてくれないことに心は満ちて、自分の恋心を伝えることも出来ないのは卑怯だと自己嫌悪して。

彼の真っ直ぐな気持ちが炎のように私を責めているようだ。
そして恋い焦がれる。まるで、この想いが身を滅ぼすような。


教室のドアが開いて、息を切らした女生徒が叫ぶ。

「清水くん、ここに居たの?早く、急いで!今日は生徒会で、重要な書類の引継ぎでしょ。放送したんだけど、気付かなかった?」

蒼白の清水くんに、私は言葉を失った。
彼は私たちに何も告げず、席を立って走っていく。

残った私と松沢くん。少しの沈黙の後、私は作業を再開する。

「篠崎、本当の気持ちは言えないのか?」

松沢くんの声に一瞬だけ手を止め、震えている自分に気付く。
誤魔化すように動かそうとするけど、上手くいかない。

「松沢くんは、どうして複数の女の子たちと付き合うの?きっと本命はいるよね。……多分、その気持ちに近いのかも。」

自分の事を曖昧にして、出してしまった言葉を後悔する。
目を落として何も見ようとせず、ずっと感じていた疑問で誤魔化そうとした。
卑怯だ。

「ごめんなさい。」

顔を上げ、視線を松沢くんに向けた。
すると松沢くんは、満足そうな笑みを浮かべて立ち上がる。

「あいつが、どうして篠崎を好きになったのか分かった気がするよ。そうだなぁ。許してあげる代わりに、俺のお願いを聞いてもらおうかな。」



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