クズ彼氏の甘く危険な呪縛
「で、名前なんだっけ?」
「……ヨリ、です」
「ヨリ、ね。いい名前じゃん」
レオくんは、そう言いながら私の頭に手を置いて撫でると、そのまま頬へ指先を滑らせた。
「んっ……」
優しくて、冷たくて、くすぐったかった。
初めての感覚に、思わず、小さな声が漏れた。その瞬間、レオくんの瞳はぞっとするほど、熱を帯びた。
「……ふーん」
さっきまでの楽しげな声とは違う、低い声が耳に響く。
熱を孕んだその瞳が、私の目をとらえたまま、微動だにしない。
逃げようとしたわけじゃないのに、体がこわばる。
「ヨリってさ、なんか……こう、言うこと聞きそうだよね」
囁くように言って、レオくんは私の顎を掴んだ。
指先に力がこもる。無理やり目を合わせられる感覚に、背筋が凍る。
そのまま、ためらいもなく唇が落ちてきた。
奪うようなキスだった。逃げる隙も、拒む暇もなくて――ただ、されるがまま。
唇が離れても、彼の顔はすぐそこにあった。
私の目の奥を、どこまでも深く覗き込むように見つめながら。
「ハハッ、初めて?……ラッキーじゃん、お前」
その力強い手に、逃げ場なんてないと、直感した。
冗談や遊びじゃなく、これは“選ばれた”んだと――そう思った。
こんなの間違っている。こんなの、絶対に。
……なのに。
心のどこかが、じんわりとあたたかくなる。
うれしい。
壊されると、わかっていても嬉しいと思ってしまった――。