ネオンー教えてくれたのは"大人な恋"ー
車内の空気が静かに流れていく

私の髪はまだ少し濡れたままで
シートに身体を預けながら
何も言えずにいた

 

──ほんとに、来てくれたんだ

それだけで
涙が出そうになってた

 

「…泊まるとこは?」

突然、飛悠が口を開いた

「……考えてない」

「はぁ…」

小さくため息をついたあと
ゆっくりとハンドルを切る

「じゃあ、とりあえず店に送るわけにもいかないし…」

「……」

「俺の部屋、少しだけなら──」

 

ドクン、と胸が跳ねた

でもすぐに続けられる

「……って言っても、変なことする気はねえよ」

 

その言葉に
ほんの少し胸が痛んだのは、自分でもよく分かってた

そうだよね
私は──まだ高校生だもん

 

「…わかってる」

小さく答えた

でも、頭のどこかでは
ほんの少しだけ
“もし”を期待してる自分もいた

 

車はそのまま静かに走り出す

 

部屋に着いた頃には
雨は弱くなっていた

マンションの一室
思ったよりシンプルで、静かな空間だった

「タオルそこにあるから」

「…ありがとう」

 

ソファに座りながら
心臓の音が止まらない

さっきまで外で震えていたのに
今は違う理由で手が震えてた

 

飛悠はキッチンで温かい飲み物を用意していた

私の目の前にマグカップを置き
向かいの椅子に座る

「…少し落ち着いた?」

「…うん」

 

しばらく、沈黙が続いた

だけどその静けさが
やけに心地良く感じてしまう

 

──今まで
誰といても感じなかった感覚だった
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