ネオンー教えてくれたのは"大人な恋"ー
最終章

ー卒業ー

卒業式が終わった体育館は
笑い声と涙でいっぱいだった

友達と写真を撮って
先生と最後の挨拶を交わして
ずっと夢みてたはずの卒業の日──

だけど

なんだろう


胸の奥は少しだけ、落ち着かなかった

 

──今日、会えるかな…

昨日も悠とは連絡を取ってない
わざわざ呼び出すのも何となく恥ずかしくて
「明日また連絡するね」で終わってた

 

私は最後に校舎を一人で出た

ゆっくり正門に向かって歩いていくと──

 

人混みの中に
ひときわ目を引くスーツ姿が立っていた

え…

立ち止まったまま心臓が跳ね上がった

──悠…?

 

信じられなくて瞬きする

だけど確かにそこには
優しく微笑む悠の姿があった

校門の少し先
人混みを避けるように静かに待っていてくれてた

 

一瞬で涙が滲んだ

まさか来てくれるなんて思ってなかった

まさか──ここで待っててくれるなんて

 

ゆっくりと近づいていく私に
悠は静かに小さく拍手して微笑んだ

「…卒業おめでとう」

 

その言葉だけで
胸がいっぱいになって
涙がこぼれそうになるのを必死に堪えた

 

「なんで…来てくれたの…?」

「来ないわけないだろ」

静かな声が、優しく耳に響いた

 

すると悠は
コートのポケットから
小さな箱を取り出した

 

「……え…?」

 

そっと私の手を取りながら

「卒業祝い──それと、俺からの…正式なお願い」

ゆっくり開けられた箱の中には
細くて小さなリングが静かに光ってた

 

真っ直ぐな目が私を見つめる

「これから…もう隠さなくていい。ちゃんと俺の隣にいてほしい」

 

息が止まった

涙がじわじわ込み上げてくる

 

「……うそでしょ」

 

「ちゃんと考えたよ。
玲那はまだ若い
だから無理にとは言わない
でも俺は──
お前のことを、ずっと隣に置いておきたい」

 

震える指でそっとリングに触れると
悠が静かに私の薬指へゆっくり通してくれた

 

「玲那は、俺の中じゃとっくに特別だった
これから堂々と、一緒にいたい
もし…玲那がよければ──」

 

涙が自然に溢れそうになりながら
私はゆっくり頷いた

「……うん」

「お願いします」

 

震えた指に
悠がそっとリングを通してくれる

柔らかくキスを落とすと
私の肩を強く抱きしめた

 

「…やっと堂々と手を繋げるな」

「……ほんとに、やっとだね…」

私はそのまま顔を上げる

「ここまで長かったよね」

「長かったな…でも、全部お前が頑張ったからだよ」

 

まだ周りには制服姿の同級生たちが残っていた

けど、もう誰の目も気にならなかった

今日だけは
この日だけは
やっとふたりの世界に全部許されたような気がした

 

「悠…」

「ん?」

「ありがとう…ここまで待ってくれて」

悠は微笑んで、私の頭をそっと撫でる

「俺も、お前に出会えてよかった」

 

──この日から
ふたりの本当の”始まり”がやっと動き出した気がした

 

静かな春の風が
ゆっくりふたりを包んでいく
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