月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
「えっ?」

ハーキムさんの漆黒の瞳が、私を見つめる。

「言ったではないか。男にそう言って貰いたいと。」

一瞬、ドキンとしたけれど、すぐ正気に戻って、私はハーキムさんの唇を、手で覆った。

「ぶっ!」

「勘違いしないで下さい。好きな人にって言ったんです。誰でもいいわけじゃありません。」

ハーキムさんは、唇を押さえながら、話を続ける。

「だとしたら、そのままジャラール様へ申せばよかったではないか。」

「簡単に言わないで下さい。」

私はハーキムさんに、背中を向けた。

「相手は、一国の王子様なんですよ?どの面下げて、恋人にして下さいなんて、言えるんですか。」

しばらく沈黙が流れる。


そうだよ。

ただ好きでいた時は、それだけでよかった。

側にいるだけで、それだけでいいって。

でも、ジャラールさんにドキドキするような言葉を貰う度に、本当に私でいいのかなって、そんな事を思う。

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