月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
「だったら、俺にしておくか?」

背中越しに聞こえてきた、ハーキムさんの言葉。

「冗談は止めて下さい。」

「こんな時に、冗談を言う男に見えるか?俺は。」

呼吸が荒くなる。

被っていた毛布で、耳を塞ぐ。

「クレハ。俺だったら、身分の差で苦しむ事もない。どこに行くにも、俺が一緒の駱駝に乗って、お前を連れていってやる。」

「そう言う事じゃない。」

「そういう事だ。自分だけが愛しているかもしれない恋愛なんて、辛いだけの恋愛なんて、捨ててしまった方がいい。」

後ろからハーキムさんの影が、近づいてくる。

今は、そんな慰めとかいらない。

私は一人分だけ、横にずれた。

「クレハ……」

「私の事は放っておいて下さい。一人で、考えたいんです。」

するとハーキムさんは、その場に座って、薪に火をつけ始めた。

「……寒くなってきたな。風邪をひいてしまう前に、暖を取ろう。」

そう言って、手際よく火をつけていく。

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