月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
「一度だけ、父上に見つかった事があった。怒られると思って逃げたが、すぐに拾いあげられてしまった。父上に叩かれると萎縮したら、その逆であった。父上は俺を抱き締めながら、教えてくれたんだ。『ここはおまえの母親の部屋だ。』と。一瞬嬉しく思ったが、すぐに悲しくなった。父上がこの部屋を眺めながら、涙を流しておられたからな。」

私はジャラールさんの肩に、もたれかかった。

「今まで、寂しかった?」

「……寂しくないと言えば、嘘になるな。」

とても強い人だと思った王子様の、心の穴に、私は触れた気がした。

「これからは、寂しくありません。」

「クレハ?」

「これからはずっと、私が側にいますから……」

するとジャラールさんが、私の髪をかき揚げてくれた。

「それは頼もしい。」


好きな人が笑顔で、キスをくれる。

その甘いキスの中で、私は夢の世界へと、入っていった。





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