月夜の砂漠に紅葉ひとひらⅡ【完】
二人で部屋の中に入ると、そこは別世界に思えた。

「豪華ね……」

椅子や机、小物が金や銀、宝石で光っていた。

まるでジャラールさんのお母さんが、まだ生きていた頃のように。

「父上に相談をしたら、クレハがここを使ってもいいと仰ってくれた。」

「なんだか勿体ない。」

「いいんだ。クレハに侍女達と同じ部屋を使わせるわけにはいかない。」

ジャラールさんはそう言うと、奥の部屋にある大きなベッドへ、私を座らせた。

「それにここを使ってもらったら、俺も母上の部屋に来れる。一石二鳥だ。」

その言葉に、胸がズキっとなる。

「……今まで、お母様の部屋に来れなかったの?」

「何回かはあるが、いつも侍女が掃除をしているところに、こっそりとね。表だって堂々と入る事ができたのは、これが初めてだ。」

子供の頃のジャラールさんが、走り回ってこの部屋に迷いこんだ姿が、想像できる。

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