花盗人は風流のうち

暴君と私

花咲涼香(はなさかりょうか)、16歳。


この春、名門・帝峰高校に入学。


両親は幼い頃に他界したが、葬式に参列していたある裕福な家に引き取られたため、今日まで生活に困ることはなかった。


引き取った先の家は、5歳の少女にもその家の財力の高さが分かる豪華絢爛さで、後にその家が日本で指折りの財閥一家であることを知った。


いくら友人の子とはいえ、人の家の子を引き取るなんて、両親とはよほどの関係だったのだろうか。


それとも、財産が潤沢な財閥一家にとっては、人1人迎え入れることなど造作もなかったのか。


答えは向こうからやってきた。


引き取られて間も無く、涼香は財閥の御曹司であるアスカという少年の相手をすることになった。


アスカは一つ年上で、身内に国外の血縁者を多く持つという一家に相応しく、日本人離れした整った顔立ちをしていた。


相手をすると言っても、歳下の自分が彼より秀でているところなどあまりなく、出来ることといったら共に過ごすことぐらいだったのだが、問題はアスカの性格にあった。
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