過つは彼の性、許すは我の心 弐
 

 ふと浮かんだ考えが、普段なら失笑ものの筈なのに何故だかそんな気がして会話に気持ちを集中させる。


「アレはモノの例えですよ。他に言えばオシリスを箱詰めにしたセト、カーマを焼き殺したシヴァとか…」

「余計分からへんわ」


 自分が人と話している気がしなくって、その恐怖を押しやる様に気持ち口調が早くなる。


「そうですか…やっぱり人の感覚って悪魔には分かりづらいですね」

「はあ?」


 自分の恐怖でも漏れ出ていたのか、揶揄い始めたのかと思ってーーー背筋が凍る。

 男を見た。

 その暗がりでも分かるその笑顔が、恐ろしい。


「…っ」

「何故そんなに驚かれるんです?貴方方が神を崇める様に、悪魔を崇める人間が居ても可笑しくないでしょう」

「そんなの、」

「ああ取り憑かれるとでも思いました?大丈夫ですよ悪魔と言っても人間であるのは確かですし、そんな能力はないですから…ただ多少(・・)特技がある普通の人間で、銃で心臓を撃たれれば死にますし、こうやって傷付けられれば血も出ますよ」


 刺されたナイフをグッと引っ張ると、ナイフは抜けて、穴からはとろとろと血液が流れる。

 引き抜く時に呻き声の一つも挙げずに、口は滑らかに、饒舌に、1つの生物の様に動く。


「でも十字架で焼かれる事も、聖水で弱る事もないです。だって貴方もそうでしょう?」

「…」

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