過つは彼の性、許すは我の心 弐
あんなぶっ倒れる様なの、絶対演技じゃないでしょうに。
「本人がそう言ってたんだよ」
「言ったって…流石に圭三郎さんが気付くでしょ」
どんな状況で妃帥ちゃんが仮病だと言ったのかは知らないけれど、天條程の家柄のかかりつけ医になれるぐらいだからヤブ医者って訳ではないだろう。
私がそう火ノ宮君に言い掛けた所で、
「自己顕示欲って奴だろう。圭三郎は土師だからゴマすりしてんだ、大方妃帥が金でも握らせているんだろう…アホくせェ」
火渡君の言葉にふと思い出す。
『そもそも土師も天條を怒らしたことあってな。“月”の一族ほどとちがうけど、干され気味やねん』
凌久君の言っていた話。
どんな理由で干されたのかとか気になっていたけれど、今はそうじゃなくって。
「妃帥ちゃんに得なんてないじゃん」
「父親が会いに来ねェから気を引きテェんだよ」
その言葉に匡獅さんがお見舞いに来てくれていないのを知る。
「事実よ。妃帥がそう言ったの。“お父様が会いにも来ないから…お兄様に傍にいて欲しいの”って」
ーーーそんなの言う訳ない。
あの夕食会での妃帥ちゃんの匡獅さんに対する態度は、駄目な父親に何も期待しない娘そのもので、我が儘を言って父親を試す様な子供っぽい態度には見えなかった。