過つは彼の性、許すは我の心 弐

 反論しないのは、獅帥君はオオミカだから?


『オオミカは妄りに言葉を発してはならない』


 そんなの。


「大体、」

「あのさあ!」


 思いの外、私の声が室内に響いた。

 勢い良く立ち上がったのはいいんだけどさ…。

 一気に視線が私に集中し、ちょっとだけ怯むが、火渡君の言葉を聞きたくなかったし、獅帥君にーーー否定してやりたくなった。

 ぐるりとまずは火渡君を見る。


「火渡君、君ねえ」


 偉そうに足を組んで私を見つめている火渡君は「アア?」と威嚇する様に、私を見返す。

 眼光の圧が100倍だけれど、こっちだって妃帥ちゃんへの愛は100パーセント(?)よ。


「今の君相当カッコ悪いよ」

「ハア?」


 不快そうに眉を顰めているが、負けじと此方も瞳に力を込める。

 
「だって客観的に見て、自分のモラハラのせいで逃げられた上に、その妻を寝取られて、八つ当たりにその間男に噛みついている夫にしか見えないけど」


 火渡君の怒声が響くと思えば、それより先に「ぶっ…」と吹き出す男の声が聞こえた。


「…カズミさん?」

「ふっふふ…すみません。余りにも言い方が明け透けで…綴様は嘘がつけないんですね」


 口元を押さえて肩を震わせるカズミさんの姿に、火渡君の怒りがレギュラー満タン状態になってしまった。


「て、テメエ…!」

「れ、烈やめとけってフッハハハッ…!」

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