過つは彼の性、許すは我の心 弐


 銀のアンティークカートを持って現れた彼は「食べられてそうですね」と言って、私のお皿(話しながらしれっと完食した自分に驚き)を下げて行く。


「獅帥何処行くんだよ」


 火渡君の呼び掛けた方に視線を向けると、既に完食して立ち上がっている獅帥君がいた。


「食べ終わった。妃帥の傍に戻る」

「おいさっきの話聞いてたのかァ?」

「…」


 獅帥君は何も語らず、火渡君を見つめている。

 自分の妹の事について、勝手にあれだこれだと論じられていれば、怒りの1つでも見せても可笑しくないのに。

 その表情の無さが逆に怖かった。

 火渡君はそんな獅帥君に慣れているのか、


「お前もそのお優しさ(・・・・)を与える相手ぐらい選べよ、あのクソアマにオオミカ様の施しを与えるぐらいなら他にやってやれ」

 
 平然と貶す様な言葉を放つ。


「おい!烈言い過ぎだろう」

「お前らだって言わないだけで、そう思っているんだろ」


 ああやだやだ何かいや。

 
 木野島君が初めて大きな声で諌めるのを聞いた(今までは軽く諌める程度だった)けれど、火渡君はどこ吹く風だ。

 火ノ宮君や清維も、火渡君と同様な考えなのか、やれやれと言った顔はするものの、口を出さない事から同じ考えなんだろう。


 獅帥君…。


 当の獅帥君は相変わらず、火渡君に何を言われても表情も言葉も出さない。
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