過つは彼の性、許すは我の心 弐


「…ま、大丈夫かあ」


 あれだけのセキュリティ達を突破するなんて、幾ら海祇渚が強くても流石に厳しいだろう。

 気掛かりではあるが、俺の勝利は揺るぎない。

 携帯を懐にしまう。


「さあて戻ろっかなあ…ん?」


 戻ろうとした所で、薄く赤い服が目に入る。

 女だ。

 アラビアの踊り子風の衣装を着た女が、此方に背を向けて周囲を見渡している。

 何かを探している様子に、悪戯心が芽吹く。

…ちょっと驚かしてやろう。

 気付かれない様に背後まで近付いた。

 そして、


「君どうしたのお?」

「っ」


 俺に声を掛けられた女は、ビクリと身体を揺らす。


「もしかして迷子お?俺案内しようかあ?」

「…」


 赤いベールを被った女が振り向く。

 顔は見えないけれど、身体付きは悪くない。

 クスリと口角を上げて、


「それとも俺とイイコトする?」


 俺が女の腰を引き寄せると、女はヒュッと喉を鳴らす。

 益々嗜虐心を煽られる。

 女を更に引き寄せて、露出した腹部を撫でた。

 鳥肌がブワリと女に立つ。

 その瞬間ーーー。


「下半身頭につけてんなよ、このクソ野郎」


 怒気を纏わせた低い女の声と共に、バチッと首元に強い衝撃が走る。

 衝撃に力が入らず、身体は壁にズルズルと凭れる。


「妃帥ちゃんの言う通りだったわ」


 意識が暗闇に呑まれる寸前、不快な女の名が聞こえた。

 パッとベールを上げた先にいたのは、


「じゃあお休みなさい。天ヶ衣さん」


 非力だと見下した女で。

 何の抵抗も出来ずに意識は途切れた。
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