過つは彼の性、許すは我の心 弐
「…俺を入れたいって高校はこの辺じゃねえよ。此処を離れるのだって考えられないし。無理すれば叔父さんに迷惑掛けちゃうから」
「でも高校ぐらい出た方が将来的にも、」
「俺はこの方がいい」
断言するナオの視線は居間にひっそりと佇む仏壇。
そこにはナオのご両親と弟の笑う遺影があってーーー何も言えなかった。
見ない様にしていた訳じゃない。
此処に来た時その叔父さんは、この一個奥の襖にいたのに出て来なかった。
きっとこの会話は聞こえている。
一戸建ての小さな古びたこの家は、前に住んでいた私の実家の隣では無い。
田舎街の郊外にひっそりと佇んでいる。
ナオの親戚は叔父さん以外引き取りを拒否した。
だからーーー…。
「ごめん無神経だったね」
「いいんだ。心配してくれてんのは分かってるよ。言ったろ綴ぐらいしか心配しないから、有難いんだ」
「…」
苦笑いするナオ。
私はガツガツと炒飯の乗ったスプーンを放り込んだ。
昔、ナオが笑うとその場の雰囲気がどんなに暗くても明るくなるから、友達内でも電球入らずだわとネタになる程だったのに。
人生の苦渋と辛酸を吸いきった苦笑いは、私の胸に重く伸し掛かった。
私にはどうにも出来ない。
何もしてやれないんだ。
私とナオの距離は近過ぎる。