過つは彼の性、許すは我の心 弐


 その声に視線を上げれば、厳しくも鋭い目に見下ろされる。

 憎々しくも渇望する様な瞳は、子供心に恐ろしくもあってーーー。


あの様(・・・)にたった1人を愛する等決してあってはなりません」


 同時に、哀れにも思った。


「オオミカは全てを分け隔てなく愛し、施しを与える存在。だからこそ、私達は貴方方を崇め奉るのです」


 荒唐無稽な話だ。

 意味の無さないしきたりや決まりに、子供ながらウンザリした記憶がある。

 でも顔に出してはいけない。

 オオミカとはそう言う存在だから。

 人如きにオオミカの心中を悟らせてはならない…らしい。

 心底くだらないと思った。

 でも、


「貴方が真たるオオミカでいればあの(・・)出来損ないも、オオミカにはなれずとも、人として扱って差し上げましょう」


 従わないといけない。

 今自分で崇め奉ると言ったその口で、自分を優位立たせ、剰え 差し上げる(・・・・・)等と宣う。

 幾らその言葉に憤りを感じても、幾ら片割れに憎まれ様とも。


『転んだ拍子にティーポッドのお湯を被ったって』

『顔に火傷なんて…』

『この間だって発作を起こして、パーティーの最中に倒れたとか』

『何故上は優秀なのに…』

『きっと全てを生まれた時にオオミカ様に捧げられたのよ』

『あらじゃあ…あの噂も本当?』

『噂?』

『だってあの子はそうな、』


 ああ聞きたくない!

< 2 / 346 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop