過つは彼の性、許すは我の心 弐


「またそうやって知らん振りすんの!?アンタは!」

「…知らん振り?」


 凌久君に押さえられたリタは、フーフーと野生の生き物の様に私を睨み付ける。


「お姉ちゃんにはアンタしか居なかったのに!アンタは!」


 円嘉の周りには沢山人がいたのに、そんな訳ない。

 
 そう言い掛けた瞬間。


「こんな奴ら放ってリタ行くぞ!テメエの借金は死ぬ程あるんだ!」

「っいや!離して!」


 揉み合っていたチンピラが、リタを引っ張って行く。

 鉄将君も凌久君も不快感を露わにするが、事情のよく知れない女を、体を張ってまで助けるまでは行かず、その場で立ち尽くしている。


 リタが…円嘉が…行ってしまう!


 私が手を伸ばそうとしてーーー…。


「…助けるか?」

「え」


 傍に居た獅帥君が、何の感情も見せずに私を見下ろしていた。

 
「お前が望むなら助ける」

「え、いや」


 これは生徒会の仕事を手伝うレベルの話じゃない。

 確かに獅帥君ならきっと助けられるだろう。

 けれどこれは人の命を、人生を助ける様な話で。

 それを。


「重く捉えなくていい。俺は綴が大事だから」


 冷たく感じる瞳とは反対に、私の強張った手を覆うその手は暖かい。


「駄目だよ…」


 私の身勝手な事情で他人の人生を負わせる事になる。


「っち!人集りまで出来やがって…退けお前ら!リタ早くしろ!」

「触んないで!」


 遠くでリタの叫ぶ声が聞こえる。

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