過つは彼の性、許すは我の心 弐


「るり先輩…」


 フレアの追っかけで、そのボス的な存在。


「獅帥様の傍にいる貴方が、覚えてくれているなんて嬉しいわ」


 あんだけ初対面敵意剥き出しなら忘れる筈がない。

 トイレへの用事が無さそうな所を見るに、


「…あの何か用事でも?」


 私だろうな。

 るり先輩は高圧的なのは変わりないが、


「…私親切だから貴方に忠告しに来たのよ」


 と言って笑う姿に、違和感を覚えた。


「忠告?」


 聞き返す私を鼻で嗤うるり先輩。


 以前は怒りを叩きつけるだけの感情的な人に見えていたのに、何処か余裕綽々で気味が悪く感じる。


「身の程を知りなさいって事」


 るり先輩は携帯を取り出して操作する。

 そして見せられた画面にーーーー意識が遠退きそうになった。


「そ、れは…」

「そう貴方が惣倉喜影と密会している現場」


 あの図書準備室で起きた動画で、手先が冷たくなるのを感じた。

 
「ああ安心して?この事を知っているのは、偶々貴方を見掛けた私だけだから」

「…」
 

 動画を中止したるり先輩は不敵に笑う。


「これでも家は大きな芸能事務所を持っているし、私自身も何回かTVに出たりしているから、フォロワーも沢山いるの。私が今操作を誤れば…」


 分かるでしょう?


 グロスのたっぷりと付いた唇が私を嘲笑い、言葉で殺そうとしてくる。


< 318 / 346 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop