結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
助手席から降りた父が、まず手を差し出したのは母にだろう。
海里から見ても父はかっこいい。
まだ背の高さは追いつけないし、筋肉質な体型もヒョロヒョロの海里よりたくましい。
そんな父の仕事を手伝ったり、家のことをしたりと母は大忙しだ。
ただしどんなに忙しくても、家にいるときのふたりはピッタリ寄り添っているから仲はよさそうだ。
海里の目の前でプロポーズしたというが、本当だろうか。
母は父と手をつないだまま、車から降り立った。それから父がもう一度タクシーに手を伸ばす。
最後に降りてきた人が、父を産んだ人なのだろう。
父の髪色は海里とほぼ同じ茶色だが、その人はもう少し明るいブラウンで白髪が混じっている。
背は高いけど、ボリューミーな人のようだ。
海里は二階の窓から家族の様子を眺めていたが、弟が花壇に入ろうとしているのを見つけた。
坂上のじいちゃんが丹精込めた庭を荒らす前に止めなくては。
海里は一階に駆け下りて、家族の前に姿を見せた。
「いらっしゃい、おばあちゃん」
初めて会う祖母に挨拶すると、すぐに駆け寄ってきてぎゅっとハグされてしまった。
その人が泣きそうな顔をしているから、海里までうれしいやら恥ずかしいやらで赤くなってしまう。
「ありがとう」
その人は、海里の家族ひとりひとりに声をかけていく。
「ありがとう。湊斗、彩奈」
「ありがとう、孫たち」
玄関に立ったまま、坂上のじいちゃんとばあちゃんはとってもニコニコしている。
これなら弟と妹が花壇の花をつんで、アメリカのおばあちゃんにプレゼントしても許してくれるはず。
五月の花壇は、ピンクや黄色、オレンジに紫それに白と、色々な花が咲き乱れている。
きっときれいな花束になるだろう。
今日の海里は弟へのげんこつを忘れるくらい、とっても気分がよかった。
ー 終 ー


